コトコト煮込んだ僕の恋。 (あまりに平凡な恋人達)

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ぷんぷんしながらも写真集を買って本屋を出る。すると斜め向かいのファストファッションのお店に焔はいた。 名札をぶら下げている。と言うことは、どうやらここで働いているようだ。 「お前、まさかこのショッピングセンターで働いてるの?」 こちらのセリフを、信じられないことに向こうから言ってきた。 「洋食屋で仕込みのバイトしてるんだよ」 「まだそんなのやってるの?」 「仕込みの何が悪いんだよ」 「仕込みったって、デミグラスソースを煮詰めるだけの簡単な仕事だろ?」 デミグラスソースを? 煮詰めるだけの? 簡単な仕事? 「うるさい。落とし穴にでも落ちろ」 腹が立ちすぎて、子供みたいな反論しか出来ない俺を焔は冷たく見つめた。 冷たい目。 熱しやすく冷めやすい男。 やつは7秒くらい俺の目を見た後、何事もなかったかのように店の奥に入っていった。
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