ゴミでできた砂浜

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 溺死だと聞いた。冬の冷たい海にぷかりと浮いていたらしい。  よく二人で出かけた海だった。海の音が好きという共通点があったせいか、俺たちは季節関係なしにふらりと海に寄っては砂浜に腰掛けて、どこにでもあるようなくだらない話をした。暖かい日は砂で汚れるのも構わずに太陽の光を浴びて、寒い日は透き通った星空を眺めては鼻の頭を少し赤くさせたお互いの姿に笑った。  パッと見た感じ損傷はなく、眠っているだけかのように綺麗な死体だった。どうしようもなく重い後悔を胸に感じながら彼女を眺めていたら、ふと、目に入ってしまった。見つけてしまった。彼女の、白い足の、ガラスが刺さったような怪我。  それまでは目にも入らなかったはずなのに、一回意識してしまった途端に視線はそこから動かなくなった。他にまったく怪我のない彼女の身体の、一点だけがあまりに異常に感じた。その痛々しい足から目を逸らしたいのに何故だかできなかった。  "ついてくんなよ"。あの喧嘩した時に俺が彼女に投げかけた言葉だ。    
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