# Special edition

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「カップケーキ焼いてきましたー」 今日はターゲットグループが陣取っていた席をなぜか講義途中で移動してきて、トムと私の後方にいる。 お陰でトムは報告書の作成が出来ず、真面目にノートテイクに励んでいた。 私も睡魔と格闘しながらどうにか耐え切った、もうヘロヘロ。 そんな私達の後方でリョウの元気いっぱいな声が聞こえる。 おーとか凄ーいという歓声に混ざって 「はいどーぞ」 リョウが皆んなに配っている声がする。 「レンとサクラにもあげるねー」 リョウはレンと私にもお菓子を差し出している。 「え、いいの?」 レンが戸惑った様な声を出す。 「いいのいいの、みんなに配ったんだから」 リョウはニコニコ。 …受け取らなきゃダメだよね。 って言うか食べるしかないよね…。 リョウが差し出しているお菓子、デコレーションされたカップケーキはラッピングされておらずタッパーらしき容器に入れられた状態で、 「今日は自信作だよー、すっごく上手く出来たのー、食べて食べて!」 ご機嫌に笑いながらリョウはカップの部分を手にしてレンに差し出し、 「あ、うん」 あきらかに戸惑っているトムは掌に乗せられたカップケーキを凝視している。 「はい、サクラも食べてー」 同じように渡されたカップケーキは、写真映え間違いなしのお洒落なスイーツ。 嬉しいーと口で言いながら、周囲の状況を見回すとみんな口に運んでいる。 エマちゃんもキャッキャしながら…食べてる。 だよね、みんな食べてるから食べるしかないよね。 チラッとトムに目配せし、そっと口に運んだ。 味に不思議な点はない。 王道のカップケーキに色のついた生クリームと星形のカラフルなチョコ。 美味しく頂きながら何かがひっかかった。 なんだろう、何が気になったんだろう。 その後もう一限残っていたはずなのに、ヒロキはエマちゃんの腕を引き、 「帰るぞ、じゃあなー」 と引っ張るように歩き出す。 微かな抵抗を見せたエマちゃんだけど、あからさまにも出来ないからされるがまま。 スマホを取り出したトムがボスに連絡するはずだと思った私は、トムを私の背に隠すように体を自然に動かし、リョウに美味しかったよーと話しかける。 ボスとジェームズさんがいるからどうにか間に合うはずだけど、大丈夫だろうけどやはり心配。 「サクラ、ちょっと飲み物買いに行かない?」 金髪の女性が私に声をかけてきた。 「あ、サクラの分あるよ」 すかさずトムが水筒をチラッと見せる。 「もう、そういうのいいから!ただ女子トークしたいだけだよ」 あ、この子…こないだ途中で帰ってホテル行った子じゃん。 あの時の相手の男性は、別な女子と楽しそうに喋ってる。 「いいよ、レンにも何か買ってくるね」 ニコリと微笑んでそう言った。 …トムの心配そうな目。 だって仕方ないでしょ、ここで無理に行かないとか言って空気悪くしたら明日からの調査に響くし。 金髪の女性はカオルと名乗った。 カフェテリアが並ぶ棟までお喋りしながら歩く。 見た目は派手だけれど、やけに露出度高めの服装だけれど、カオルのフルネーム聞いて気が付いた。 この子昨年の主席じゃん。 当たり障りのない話題が続き、テイクアウトのコーヒーを買ったカオルに倣いカフェラテを買った。 …コーヒーなら講義受けていた棟の自販機でよくない? そんな私に、ここのコーヒーの方が美味しいと説明を始める。 …そりゃあね、名の知れたコーヒーショップですからね、今アナタが飲んでいるコーヒー。 でも、アナタは学生でそのコーヒーを買った電子マネーはご両親の送金じゃないのかな、大事に使おうよ。 ここ学費高いんだって本当に。 そんな事を思いながら戻ると、 「あれ、」 …トムがいない。 荷物もない。 っていうか、私の荷物もない。 「レンなら帰ったよ、なんかお腹痛くなったって」 「…え、あ、そうなんだ」 …んなわけないでしょ、何があった? 帰らざるしかなかったって事でしょ、だから私の荷物を持ってったのね。そりゃそうだよね、置いて行って中身覗かれる方が危険だよね。 「あ、教科書見る?」 カオルが気を遣って声をかけてくれると、もう1人の女子、この子も前回帰った子じゃん!アキだっけ? アキはニコニコしながらルーズリーフとペンを差し出してくれる。 「スマホで写メっておけばいいんじゃね」 あれ、この人見た事ないや。今日初めてじゃないかな。って事はこの男性とカオルとアキ、ここに残った3人が前回キャンディー食べて帰ったメンバーなのね。 そうだね、と笑って頷きながら瞬時に考える。 さて…どうしようかな。 トムが私に黙って居なくなるのは緊急事態だとしか考えられない。 しかもリョウも居ない。 大方、2人は一緒だと考えた方が良いって事だよね。 …。
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