# Special edition

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講義は始まっていたけれど、とりあえず抜けることにした。 お腹痛くなってきたから、そうカオルに耳打ちすると、 「ウッソ、だってピンクじゃなかった?」 「え…ピンク?」 「さっきピンク食べてたんじゃないの?」 「あ、カップケーキ?ううん、水色…、」 ハッとした。 そういう事か! 「…実はさ、生理なんだよね」 コソっとそう言うと、あー、と納得するカオル。 女子ならみんなわかってくれる理由。 講義を途中退席し、講義棟を出ながらトムのスマホに連絡するがコール音だけが鳴っている。 トムなら私の連絡を無視するはずはない。 すぐさまロビンに連絡する。 「はいはーい、愛しのハニーなんかあったー?」 全く緊張感のないロビンの声にホッとする。 「はい、トムがいなくなりました。20分くらい前かと思います。多分、トムとリョウが一緒だと思います。エマちゃんもヒロキが強制的に連れて行って戻ってきてません」 誰が聞いているかわからない。 声を顰めて要件を単刀直入に言う。 「リョウが持ってきた手作りのカップケーキを食べました」 「…わかった、今体調に変化は?」 「ありません。でも、もしかしたら何か混ざっていたのかもしれません」 「おそらくな、とにかく大学から出な」 「はい、正門に向かってます、今3号館の横を通り過ぎました」 「了解、俺は東門から入ってる、このまま電話繋いだままでこっち見ないでそのまま出な」 「すいません、トムが、」 「リリィ、今はいい。トムを探してからだ」 「…はい」 「お、愛しのハニー確認。愛してるよ、ハニー、リンダが正門右で白い外車で待ってるから」 「はい」 足早に歩く私の左側に視線を感じた。東門の方向。きっとそれがロビンだろう。 一目見たいけど、言いつけ通り真っ直ぐ歩いた。 守衛さんが見えると少しホッとする。 正門を出ると真横にリンダさんはいた。 真っ白な高級外車に乗っている。 「はーいリリィ、おつかれー」 「すみません、トムが、」 「うん、聞いたわーこっちからは出てきてないからきっとまだ中にいるわよ」 「え、そうなんですか?」 「だって、私が正門、ロビンは東、今月は北門は封鎖中でしょ、あとは西だけどそっちにはボスがいるわよ」 「エマちゃんは?」 「大丈夫、トムからの連絡受けた瞬間、西からボスが乗り込んだから途中で確保してるわ。今頃西門出た辺りでボスのお説教よー」 「ヒロキ、」 「あの威勢の良い坊やも一緒よ、あの坊やね、西門付近に車停めてんのよ。ボスが間違いなくエマが狙われるって言って自ら西門で待機してたの」 それを聞いて少し安堵する。 「ジェームズさんは、」 「中で捜索してるわよー、大丈夫すぐ見つかるわー、トムの位置情報ちゃんと受信してるもの」 そう言ってタブレットを見せてくれたリンダさんは、 「トムも勝負に出たわね〜、成長した事」 ウフフと色っぽく笑う。 「え…どういう意味ですか?」 質問した私に、 ブランド物の女性らしい華奢な腕時計を見て時間を確認したリンダさんは、 「トムが消えて30分、もうそろそろ見つかるわよ」 「…え?」 「そろそろお薬が効き始める頃だもの、リリィは眠くなーい?」 何故それを…、そう思いながらファーっと欠伸をこぼす。 あ、また…、 「眠いですけど、それ以上に怠いって言うか、」 「あら〜気分は?」 「あ、それは平気です」 答えながらもまた欠伸を溢す。 「ちょっと目を瞑ってて良いわよ」 「え、いえ、」 そんな呑気に眠れる訳無いじゃん、と思う反面、眠くて仕方ない。 不謹慎だよね、こんな時に。 眠気と戦う事数分、 「あ、はーい、」 リンダさんのスマホが鳴り車が発進する。 「うん、こっちもそうよ〜、早い所答え合わせしちゃいましょ」 Bluetoothで話しながら国道に載ったリンダさんは楽しそうに笑いながら運転している。
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