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閉じそうな目をこじ開けるようにしている私の為にか、助手席の窓を全開に開けてくれたリンダさんが連れてきてくれたのは、
職場の近くの運動公園だった。
広い駐車場の一角に見慣れた車が数台停まっている。
「あら嫌だ、アタシが最後かしら」
リンダさんの車が近付くと皆んな車から降りてきた。
そこにはボスの車から引きずり下ろされたヒロキもいる。
「さ、降りましょう」
リンダさんがそう言って車を停めると、助手席のドアをロビンが開けた。
お疲れー、とロビンが声をかけてくれ、その声にリンダさんが応える。
私も応えなきゃいけないのに、なんか眠気が凄くって…、
「っと!リリィ?」
「…すみません、ちょっと目眩みたいな、」
シートから降りようとした瞬間グランと景色が揺れた。
「そっか、体質の違いかしらね〜」
リンダさんの声に、
「車で休まれてはどうです?病院行きますか?」
ジェームズさんの声。
「行っても帰されるわよ、睡眠不足と疲労で片付くわ」
ボスの声。
「休んでていいぞ、」
ロビンの声に嫌々と首を振る。
そんな私をリンダさんの車に寄り掛からせるように立たせてロビンは抱き寄せる。
…駄目だ、このまま眠ったらこうなった原因をリアルタイムで聞き逃す…。
この眠さと怠さの原因、なんとなくわかってはいるが、この原因の確証を得るまでは何がなんでも起きてなきゃ…。
「エマは大丈夫ね?」
「…はい、少し車酔いみたいな感じです」
ボスの問いかけに車を降りてきたエマちゃんは青白い顔で頷く。
「トム!」
「っはい!」
ボスの呼びかけにシャキッとするトム。
「よく逃げ切ったわね、なかなかキツかったんじゃない?」
「まあアレです、俺にも選ぶ権利あるんで」
苦笑いしながら疲れたような表情で答えるトム。
良かった…トム、無事…、じゃないのかな?
なんか自棄に乱れている。
「ヒロキ、いらっしゃい!」
エマちゃんの隣で項垂れていたヒロキは凄く怠慢な動きでボスの隣に歩いていく。
「だらだらしないでシャンとしなさい!時間かけないで!」
ボスは叱り飛ばす。
「もう皆んなわかったわね?」
ボスが私達を見回す。
「ヒロキ、話しなさい!ボイスレコーダーお願い、リンダ」
ボスの命令にヒロキがゲーッと顔を顰めるが、エマちゃんに背中をバシンと叩かれている。
どうやら、ボスとエマちゃんは既に詳細を知っているみたいだ。
「…あのお菓子に薬が入ってるんだよ」
ヒロキは面倒臭そうに話し出す。
「睡眠薬みたいな眠くなるような成分のやつと、人によっては気分が高揚するやつ。最近流行ってるんだよ、仲間内で」
「2種類あるって事ね、それで?」
「でも個人差があるから効くヤツと効かないヤツがいて、それじゃ面白くないからってリョウが薬の量を増やそうってなったんだ。ついでに、ロシアンルーレット的に薬の入ってるのと入ってないのとにしたら面白いじゃんってなって、」
「それは誰の案なの?」
「誰のって…もう覚えてねーよ、みんなで酒飲んでる時に誰かがそんな事言い出して、やろうやろうって盛り上がって、」
「それでリョウって子がスイーツに混ぜるようになったの?」
「そ。はじめは酒に入れて飲んでたんだけどアルコールと一緒だと酔っ払っててよくわかんねーから、酔ってない時にやろうってなって。で、リョウが手作りのチョコやクッキーとかに混ぜるようになって」
「じゃあグループのメンバーは全員合意の上なのね?」
「…それは…、最初は仲間内で…、誰のに入ってるか食べる方はわかねーじゃん、それが面白くて」
「それで?」
「そのうち…誰かが言ったんだよ、いつも同じ相手じゃ面白くないって、だから…、」
ヒロキは言葉を濁し視線を逸らす。
「グループじゃない、つまりは薬が入ってる事を伝えないで、アンタらの勝手な遊びの巻き添えになった子も居るって事ね」
「…まあ、あ、でも俺はそういうのしてねーからな!」
そんな事言ったって信憑性は薄い。
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