# Special edition

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「寝てて良いよ、着いたら起こすから」 助手席に座った瞬間、既に夢うつつな私にロビンはそう言うとシートベルトをしてくれ、 「よし出発」 ゆっくりおでこと頭を撫でられた感触に安堵しながら深い眠りに入った。 「彩綾、」 …さっきからロビンの声が微かに聞こえる。 「彩綾、そろそろ着くよ」 …もう家? そっと髪を撫でられる感触に意識が浮上する。 「ほら、もう見えてきたよ」 「…うん、」 「あ、起きた?って言うか起こしてごめん。でも、流石に抱いて行くのは変に勘繰られそうだからな、部屋行ったら寝ていいから頑張れる?」 「…うん、」 「ん、良い子」 また優しく頭を撫でられロビンの手の感触をダイレクトに感じた所で瞼を持ち上げた。 運転席に座るロビンが視界に入り、 「さ、着いたよ」 私に笑顔を見せてくれる。 ゆっくり身体を起こす。 助手席のシートが緩やかに倒されているのはロビンが身体の負担を考えてくれての事だと思う。 車を停車したロビンは、何故か右手をちょっと上げて軽く会釈をしている。 誰か顔見知りの住人でも居たのかな。 「まだ眠い?」 大きな手が頬を撫で耳元をスッと撫でる。 「…あれ…髪、」 「ウイッグなら取ったよ、寝ずらいかと思って」 そう言って軽いリップ音をたてながら、おでこにキスを落とすと 「頑張れる?」 と、優しく私を覗き込んだ。 「うん…頑張れる、なんか…凄くよく寝た気がする、」 そう言った私の髪を緩やかに撫でつけるとロビンは運転席から降りる。 フワ、っと軽く欠伸をしながら助手席のドアを開けると、 「さ、行こうか」 ロビンの手が私の掌をそっと包んで、 『ようこそおいで下さいました』 …聞き慣れない声と言葉に顔を上げた。 …え…、 「…どこ、」 寝起きの瞼をめいいっぱい開いて見ている世界はとても幻想的。 夜が直ぐそこまで迫っている薄暗い空間の所々に広がる幻想的なオレンジ色のライト。 微かに広がる夕焼けの空と紫から黒にグラデーションがかっている空が芸術的に調和され情緒ある風景。 映画を見ているようなノスタルジックな世界が目の前に広がっている。 マンションのコンシェルジュとは全くの別人の細身の男性がロビンからキーを預かっていて…、 「さあ、行こう」 ロビンは私の手を引きゆっくり歩き出した。 煌びやかな外装とは正反対と言っても良いと思う。 でも質素とかではなく落ち着いた広い空間が広がり、足元を照らす温かみのあるオレンジ色の照明が異空間に誘う。 「ロビン、ここ何処?」 「さあ?何処だと思う?」 「家じゃない」 「そうだね、違うね」 そんな会話をしながら着いたのは小さなガラス張りの建物で、自棄に綺麗なお姉さんが笑顔で迎えてくれ勧められるままゆったりしたソファに腰をおろした。 ロビンはそんな私に微笑み、頭のてっぺんにキスを落とすとカウンターに向かい何か手続きをし始める。 さほど広くない空間には静かに心地よい音楽が流れていて、ガラスの向こうでは焚き火だろうか、火がゆらゆら揺れている。 ぐるっと見回した室内は何処かで見たような感じがし…、 カウンターの隣にディスプレイされている小さな色とりどりのリュックのような物を見つけ気が付いた。 …ここ、ホテルじゃん…。 それもメディアで特集が組まれる程人気の評価の高い贅沢な施設じゃん。
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