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「俺はね、ずっと本気で彩綾に触れたいって思って仕方なかったよ」
「…じゃあ、」
「男の触れたいと女の触れたいは必ずしも同じじゃないよね」
「…、」
「心が通じ合ってても、愛おしくて仕方なくても、俺の希望だけではダメなんだよ。2人で同じように求め合って身体を繋げなきゃ、あれ?って疑問を感じる時が来るかもしれない。セックスっていう行為だけが先行しちゃって、彩綾がやっぱり身体だけなんだーってほんの一瞬でも思うのが俺は怖いよ」
そう言いながら優しく微笑むロビ…、斗真。
「彩綾を愛してるから触れたいけれど、その触れたい気持ちが俺の独りよがりだったら申し訳無いしね」
「そんなの…私も同じだよ」
「うん、最近はもしかしたら彩綾も俺を求めてくれてるかなって、そうなのかなーって気付いてた」
「じゃあ言ってくれれば…って言えないですよね、私だって言い出せなかったんだから」
うん、と優しく笑い、
「俺ね、この歳で笑っちゃうだろうけど、本当に本気で大事なんだよ彩綾が。だから嫌われたくなくて必死なの。嫌われるくらいなら、チキンでもヘタレでも何でもいいんだ」
「…私だって嫌われたくない。今までそういう誘いなんてした事無いから、全部なし崩しに言われるがままの恋愛しかしてきてないから、斗真に優しくされたり、大事にされてるのは凄く実感出来て幸せ何だけど、私は同じように返せているか心配で不安です」
「充分実感してるよ」
「私もです」
そう言って抱き合った私達。
…ああ、此処まで長かったな、でもその時間が私達には必要だったんだろうな。
「斗真も私もいっぱい考えてたって事ですね、でもその時間があって良かった、もっと斗真を大切に思える」
「そうだね、これからもいっぱい考えていっぱい悩んで2人で答え合わせしよう。違う答えでもきっと受け入れられるよ」
「うん、そういうのも刺激になって結果良い方向に纏まっていく気がする」
そうだな、と笑った斗真はおでこに頬にキスを落とす。
「…私もそれなりには悩んだの。一緒に仕事しているから、家に帰ってもその延長っていうか同僚のままでそんな気にならないのかなって」
「まさか。前にも言ったろ、そういう切り替えはきっちり出来るんだって。仕事の延長は無いんだよ」
そう言ってそっと私を離した斗真は、
「魅力的すぎて毎日が拷問、本気でずっと仕事なら良いのにって思ったほど」
そう言ってギューっと、私が斗真に強く抱きしめられているんだって、そう実感できる強さで抱きしめてくれた。
この人の、この大きな愛情に包まれてこんなにも幸せな気分になれる。
私は本当に幸せ。
「そういえば、私昨日からお風呂入ってない」
「そりゃグッスリ眠ってたもん、流石に眠ってる彩綾を風呂に入れるのはこれまでの心理戦による極限状態に近い男の事情により出来ません」
戯けてそんな事を言う斗真に笑いながらギュッと力を込めて抱きつき返す。
「一緒に入ろう」
そっと見上げてそう言うと、
「俺もそう言おうと思ってたところ」
ちょっとだけ眉を跳ね上げそう答えた斗真は、
「愛してるよ」
そう耳元で囁いてくれた。
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