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不動産屋は無感情な目で私を見下ろしている。
ナイフを向けたままの馬乗りになっている状態で…。
そして、その不動産屋のすぐ隣にニッコリ微笑む妹がいる。
なんで妹がいるの…?
「時間ないから単刀直入に言うね?私と付き合おう、ね?」
妹はニッコリ微笑みながら私に向かって話している。
……、…え…、…な、に?
「初めて見た時から絶対に付き合いたいって思ったの、一目惚れしちゃった!ね、いいでしょ?」
無表情な不動産屋の隣でニコニコしながら楽しそうに話す妹。
…え、
「お兄ちゃん、今はこんなんだけど私と付き合えば大丈夫だし、味方になってくれるよ、普通のお兄ちゃんだから、ねっ」
…私と付き合えば…って、何?
「あんな男より私の方が良いって!絶対楽しいから、ね?」
…私と…妹が付き合うって事?
「あーもう、お兄ちゃんが殴るから顔が血だらけになっちゃったじゃない!チュウしたかったのにー」
妹はスッと手を伸ばすと私の髪をゆっくり撫でつける。
「ほーんとキレイ、スラットしてて手足が長くて顔小さくて、目もパッチリ二重で大きいし、もう狡いー」
髪を撫でた手で不動産屋が押さえつけている腕を撫でる。
「うわー、指も長いんだねー、イイなあ羨ましいー、あ、良かった!指輪は入ってないや、あたしとお揃いにしようね」
左手の薬指をスッと撫でるとペロリと舐めた。
その行動に身がすくむ。
「やだービクってしたー、可愛いー」
クスクス楽しそうに笑いながら、
「お兄ちゃんちょっとどいて、我慢できない」
そういうと兄をグイッと押しやる。
ほんの僅かに身体の上半身、左側が軽くなり、すかさず妹が空いた体を撫で始める。
「うっわー、おっぱいもあたしより大きい気がするー、あー早く一緒にお風呂入りたーい、お揃いのパジャマ着てゆっくりお喋りしようね、ね、いいでしょ?もう良いじゃん、お兄ちゃん連れて帰ろうよ」
ぞわぞわっと全身に鳥肌がたつ。
この妹、ちょっと…、
「まだ了解してないからダメだ」
「でもあたし欲しいもん」
「了解してからだ」
「えー面倒くさい」
兄妹は私の上でそういう会話をしている。
待って…、待ってよ。
妹が私に好意を持っているって事は理解できた。
じゃあ、あの写真や手紙は妹がしてたって事?兄じゃなくて妹?
「ねえ良いでしょ?あたし達付き合うよね?」
妹はグイッと顔を寄せてくる。
なんで…、なんで…、
「ねえってば、早く頷いてよ」
この妹は私が同意する事を願っているけれど、そこになんで私の意思は汲んでくれないの?
「ねえってば!早く頷いてくれないと嫌なんだけど!あたし絶対あなたと付き合いたいんだけど!あたし、キレイな者が好きなの!あたしの理想の彼女なの!お揃いの服着てデートしよ、ね?」
なんで自分の思いをそんなに押し付けるの?
「女同士のエッチってすっごい気持ちいいんだよ、教えてあげるね!大丈夫絶対好きになるから!それにあたしとあなた似てるでしょ?だからぜーったいお似合いだってば!ねーえいいでしょー、付き合おうよー、ねえってばー」
妹は急かすように性急に言葉を繋ぎながら、私の身体を撫でつける。
「コイツダメじゃん」
兄が大きな舌打ちをしてそう言った途端、妹が一際大きな声で催促してきた。
「ねえってば!」
妹の顔が歪んで見える。
頷く事はできない。
暫く沈黙が流れた。
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