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車内ではいつもの音楽のみが流れていてロビンは黙ったままだった。
申し訳ないけれど、私もまだ説明できる状態に戻れず、時折涙が零れ落ち、泣きたいわけじゃないのに泣いてしまう…。
ロビンのマンションについても、抱き上げられ部屋に戻るまでの間も、ロビンはずっと黙ったままだった。
ソファーにそっと降ろされる。
間接照明の灯りだけが部屋を照らしている。
「ちょっと待ってて」
私が頷いたのを確認してから、お風呂を沸かし、お湯を沸かしている。
お湯で濡らしたタオルをレンジでさらに温め、それをそーっと俯いている私に差しだす。
コクリ、頷いて温タオルを受け取り、静かに顔を拭いた。
殴られた頬の痛みは勿論あるし、顔面が重いような違和感もある。
それよりもショックだったのが大量に出た鼻血だった。
顔じゅう血だらけで、それを拭った手も、買ってもらった洋服も赤黒い血で汚れている。
せっかく買ってくれたのに…、こういうの似合うよって笑って言ってくれたのに…。
そう思ったら、また涙が溢れてきた。
「ロビン、」
「ん、どした?痛むか?」
フルフルと首を振って、そうじゃないよ、と訴える。
「…ごめんなさい、」
「…今は何も言わなくてもいいよ、後で落ち着いてから話そ」
「服、買ってくれたのに血で汚しちゃって、」
涙ながらにそう言った私の目の前、床に座ったロビン。
温かい手が私のタオルをギュッと握った両手をそっと覆う。
「そんなのいいんだよ、」
「…嬉しかったのに、」
「うん、」
「すごく嬉しくて、みんなも似合うって褒めてくれて、」
「うん、わかってるよ。また買おう、俺がまた選ぶから。次はリリィも好きなの選んでいっぱい買おう」
「でも、」
「わかってる。リリィが喜んでくれて大事に思ってくれたその気持ち、ちゃんとわかってるよ、大丈夫だから」
そう言って抱きしめてくれるロビンの優しさが有り難かった。
ロビンに顔を拭いてもらい、手を拭いてもらっても、血の独特の匂いが身体中に纏わりついているようで不快だった。
「風呂入れるか?体が冷え切ってるからゆっくり温まれるといいんだけど、ただ…、」
語尾が曖昧に濁された。
さすがにわかる。
ロビンが聞きたいけど聞けない事。
私が真っ先に言わなきゃいけなかった事。
「…お風呂入ってもいいですか、気持ち悪くて」
「…うん、」
「そういう事はされてません、だから…お風呂入りたい、」
そう言った私をフワッと抱きしめる。
「…ほんとです、見た目には多分酷いでしょうけど、そういう…卑劣な行為はない、です、信じてください、ほんとです」
「…ああ、」
「あと…ビニール袋、小さいのでいいんで。それとハサミを、」
「…ああ、」
「心配かけちゃって…ごめんなさ…い、」
「…気にしないで、」
「見つけてくれて、ロビンが来てくれてよ…かった、ありがとう、」
「どこも…怪我したりしてない?」
「…顔は痛い…です、」
「うん、冷やそう、ホントは今すぐ冷やしたいけど、嫌なんだろ、」
「…はい、血の匂いが…気持ち悪くて…」
ギュッと強く抱きしめてくれたロビン。
その力強さが嬉しかった。
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