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暫くそういうやり取りをした後、ロビンはギュッと強く抱きしめた。
私も背中に手を回す。
「…駐車場で隣の車の人に助手席のドアにマフラーが挟まってると教えてもらいました。隣の車はすぐ出ていって少し様子を見てましたけど、駐車場に入ってくる従業員も何人かいたので、車から降りて助手席側に回りマフラーをとりました」
「うん、」
「…多分助手席のドアは閉めたと思います」
「うん、閉まってた」
「背後からお疲れ様ですって声をかけられました。私の事を従業員だと思って挨拶してくれたんだと思ったんです。だから挨拶を返そうとした時引きづられました。左腕を掴まれてもの凄い力で引き倒される感覚でした…倒れるって思った時には抱えられてて口に何か貼られたみたいで…足だけは地面にかろうじて付いているような体勢で引きづられました」
「…うん、」
「今思えば、車を降りる時には助手席側に車も人も居なかったんです、外灯から少し離れた場所に車を停めたのは部外者だから目立ちたくなかったからでした。その時駐車場の奥にワンボックスと大型車が停まっていてその間なら目立たないって思ったんです。ワンボックスの奥には車は見えなかったんです。その事がすっかり頭から抜け落ちてました」
「…うん、」
「…駐車場の奥はどうなってたんですか」
「整備されていない枯れ草が生い茂った空き地だった。その奥に交通量の多い国道がある、彩綾がいたのはその国道が走っている陸橋の下だ。トラックや車の音に掻き消されて見つけるのが遅くなった、本当にごめん、」
ロビンが悪くないのにまた謝ってくれるから、もう謝ってほしくないからロビンの謝罪を遮るように口を開く。
「地面に叩きつけられるように押し付けられ…不動産屋の兄が私にナイフをい向けてました。やっぱりコイツだった、そう思ったんですけど…違くて…妹が私に好意を持ったらしくて、妹に付き合ってと言われました」
「…妹?兄貴じゃなくて?」
「はい、私も自分の置かれている状況すら理解していないのに妹の一方的な願望を押し付けられて驚きが大きくて、理解し難い内容でした」
「殴ったのは、」
「兄です、私が大人しくしろという命令に逆らったので殴られました」
「髪は、」
「これは妹です…付き合う事を拒否した結果です、兄が持っていたナイフはバタフライナイフでハサミになりました。まあ、切られてからそれに気付いたんですけど、」
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