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#6
あの兄妹は逮捕された。
あの件の翌朝、目が覚めるとボスがいた。
ロビンに買い出しに行かせて私と2人っきりになると、私をギュッと抱きしめながら本当に乱暴されていないかの確認をしてくれた。
勿論、そういう事がなかった話はロビンから聞いてはいたのだろうが、
ボスは自分の目で私を見て、自分の耳で私からの言葉を聞きたかったのだと思う。
ジェームズさんが心配し過ぎて一睡も出来ていないという話を聞き、すぐさま電話した。
「リリィさん大丈夫ですよ、然るべき手は既に打ってありますからね」
涙声でそう言ってくれたジェームズさんは、ボス曰く元敏腕刑事さんだったそうで、
「私が駆け出しの頃面倒見て貰ったのよ」
とニッコリ微笑んでそう言った。
…ジェームズさんは元刑事さんだった話は知っている。
駆け出しの頃面倒見て貰ってた…って、…え、もしかして、
あ、そういえば前にロビンもそう言う事を言ってたような…。
移住の話が衝撃だったからすっかり流しちゃってた…。
「あら、言っていなかった?私も刑事だったのよ。男の縦社会は私には居心地が悪くてね、男の格好も窮屈でストレスの日々だったから、解放された時は本当に幸せだったわー。ジェームズもロビンも受け入れてくれてたから、ああ、ロビンは甥っ子なんだけどね。楽で自分らしく居られるこっちのあたしを否定しないでいてくれた2人には感謝してるのよ」
ニコリ美しく微笑んでサラリと衝撃的な発言をした。
ボスは…ボスだ。
男性でも女性でも、そんなの関係なくボスだ。
ボスがこの話を敢えて今私にした事には昨日の件があるからだろう。
愛は、性別の関係はないんだよって事なのかもしれない。
だからって歪んだ愛の形を押し付けてはいけないのだけれど。
その事に、あの妹が、兄妹がいつか気がついてくれたらいいなとは思う。
許す事はできないけれど。
そんなボスの計らいで、ロビンと私は2週間のリモートワークになった。
この仕事、意外に会社じゃなければ出来ない業務っていうわけでもないからこういうスタイルも問題ない。
顔の腫れと内出血の痣が消えるまではとにかくロビンの家でお世話になることになって、
「リリィ私の知り合いにすっごく使える美容師がいるからロビンに連れてって貰いなさい、ね」
ボスが帰り際に美容室を紹介してくれた。
ロビンもそう言っていたから、そういう人がお知り合いなら安心できる。
変に詮索されたくはないもの。
そして、もう一つ、
「あ、そうそうナイショなんだけどね、今日の夕方にはあの兄妹捕まるから大丈夫よ」
驚きのマル秘情報を残していってくれた。
ボス…なんで知ってるの?
そんなボスにやれやれと言った表情のロビンは、その詳細をなんとなく知っているっぽい。
でもそこはやっぱり教えて貰えなかった。
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