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「…でも今は俺の事好きなんだよね」
「…はい、そうなんです」
「じゃあいいや。これからこれまでの印象塗り替えてく」
「…期待します。…あ、一つだけ言っておきたいというか、言っておかなきゃいけない事あって、いいですか?」
「うん」
「私、昨日一緒にお風呂入ったのはワンナイトを狙ったからじゃないですよ。まあ、昨日の事件がなければいつか狙ったのかもしれないですけど、昨日のはそう言うんじゃないんです。昨日はただ本当に、何も考えるのも嫌で動きたくないって言うか動けないって言うか…」
「一緒にふろ入ったやつね、わかってるよ。あんな状況になったら誰だって平常心でなんていられない。リリィだってそうだよ。いくら仕事柄いろんなケースを見聞きしていても免疫があるわけじゃないだろう?自分が被害者になるんだ、そういうふうになってもおかしくない、あれで良いんだよ」
ロビンの優しい言葉に涙がじわりと浮かぶ。
「俺からも言っておきたいんだけど、昨日の事件があったからプロポーズしたわけでもないし、一緒に風呂入ったからでもないからね」
「…はい」
「ずっと一緒に仕事してきて、リリィの良い所も悪い所もそれなりに見てきて、多分俺がそういうの1番近くで見れる存在で、それがずっと続けば良いってそう思ったんだ」
「はい」
「ずっとバディ組んで仕事したいし、リリィの笑顔も泣き顔も俺が独り占めしたいんだよ、それって凄くリリィの事が好きって事だろう?一緒に眠りに入る時もリリィが良いし、目が覚めて隣にいるのもリリィが良い」
「…凄い告白ですね」
「こういう事ちゃんと言葉にしとかないと。ついさっき学習出来たからもう間違えない」
そう言うと鏡越しのロビンはこれまで以上に優しい眼差しで私を見つめた。
「彩綾、結婚しよ」
〜
「はい、お願いします」
嬉しくて涙が溢れた。
顔に痣を作り頬が腫れ短くバラバラに切られた髪。
そんな私にプロポーズしてくれるなんて…なんて優しい人なんだろう。
きっと、この姿を見て悲しく思ってしまう私に、
嫌な出来事が嫌な思い出となって残る前に、
人生で1番幸せだって実感出来る、素敵な思い出に上書きしてくれたんだと思う。
ロビンは違うよって言ってくれたけど、きっとそうなの。
だってロビンはそういう人。
大きな大きな優しさで私を包んでくれる人。
そういう人だから…、
「抱きついてもいいですか」
鏡越しに泣きながらそう言った私に、
「お、気が合うね、俺も抱きしめても良い?って言おうと思ってた」
そう言って両手を広げてくれるロビン。
振り向きざまその胸にしがみついた私をギュッと抱きしめてくれたロビンに、
「すっごい嬉しいです私。好きな人に好きって言ってもらえて、結婚しようって言って貰えて…、幸せです」
「うん、俺も嬉しい」
「斗真、大好きです」
自分の想いを言葉にした。
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