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ボスの知り合いの美容師さんは、ひょろっとした金髪のイケオジさんで、
「美人さんだからベリーショート似合うよ、見ててごらん」
そう言ってあっという間に凄くカッコいい髪型に切ってくれた。
ロビンが昨晩頑張って見栄え良く切ってはくれたけれども、アンバランスさがどうしても残ってしまっていた髪は、凛々しい素敵なスタイルになっていた。
プロがみれば気付いたであろうその髪の原因も、顔の痣の原因も一切口にせず、
「お代なんてとんでもない!ダメダメそんな事出来ないよ!俺まだ無事でいたいもん」
と追い出された。
そんな美容師さんにロビンは『だよな〜』と納得顔で頷きながら戸惑う私を促し美容室を後にした。
どうやら、ボスは凄いらしい…。
「さて、外出ついでにちょっと寄り道して良い?」
そう言ってロビンは新築のマンションの駐車場に車を停めた。
「なんですかここ?随分閑散としてますね」
「まだ入居してないからね、ちょっと見学」
エントランスを潜るとスーツ姿の初老の男性が笑顔で迎えてくれて案内してくれた。
低層階のファミリータイプのマンション。3LDK。まだ壁紙もインテリアもない空間が広がっている。
「少し前に販売が開始されて予約してたんだ、間取りとか同線とか見てみて、感想頂戴。あ、因みにこの方はここのコンシェルジュさん」
コンシェルジュさんって…初めて見たよ、びっくりだよ。
ロビンは私が移住するって話が浮上した時、自分1人ならセキュリティはさほど重要ではなかったけれど、一緒に生活するならセキュリティはしっかりしていないと無理だとボスとジェームズさんに話したらしい。
ジェームズさんのお知り合いがここのコンシェルジュさんだということもあり、周辺の環境をリサーチしたそうだ。
結果、セキュリティもバッチリ、周辺も明るく安全、スーパーもドラッグストアもコンビニも近く、駅からも直進で数分、駐車場も明るくセキュリティ対策が施されているそうで、満場一致でOKが出たそうだ。
みんながOK出した物件なら私は何も言うことはないでしょ。
でも…、
「ロビン、お家賃幾らですか?私折半出来るかどうか不安なんですけど」
後はお二人でごゆっくりご見学ください、とコンシェルジュさんが出て行った瞬間ロビンに質問した。
「お家賃はないよ」
「なにふざけた事言ってるんですか、ここ絶対高いじゃないですか」
「分譲だから」
「ぶ、分譲?買うんですか!」
「俺1人なら、こういう仕事だし引越しする機会も多いから賃貸で良いけど、リリィと住むのにセキュリティ重視しなくてどうすんの、俺四六時中ハラハラしっぱなしで仕事にならないよ」
「いや、だからって、」
「もし子供が出来て戸建てが良いってなったらそういう家建てればいいじゃん」
「建てればってそんな簡単に!だいたいそうなったらマンションどうすんですか」
「え、貸せばいいんだよ、売るにしても景気の流れを見極めてから考えればいいし、でも貸した方がいいだろうな」
ベランダから外を眺めてうーんと伸びをしているロビン。
この人凄いな…。
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