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「よし、あみだくじにしましょ」
週明け月曜日、久々にオフィスに全員集合した朝のミーティング。
これまではボスの指名制でバディを組んできたけれど、今回はくじで決めようとボスが言い出した。
「まあ、誰がどの依頼になっても一緒だものね」
リンダさんがハアっと溜息を吐く。
先週でスタッフが分担して調査していた件が全て片付いた為、今日から次の調査に入るのだが…今回の依頼は浮気調査。
それもほぼ同時期に3件も重なって依頼が来ていた。
勿論これまでもその手の調査は頻繁にきていたけれども、ほぼ同時期に重なるのはなかった。
「2人ずつ組んで3件に分担ですね、ボスは今回はフォローでお願いしますね。片付いた組からその次の依頼に入りましょう」
ジェームズさんが調査表をテーブルに並べながら見比べている。
「ええっと、20代女性からの依頼に、60代女性、40代男性、どれに当たっても楽しくはないですねー」
エマちゃんは何でもいいやーと投げやり。
「男性と女性に分かれてあみだにしますか、その方がバランスもいいですし、価値観の偏りもないですもんね」
トムはそう言って早速あみだくじを作りはじめた。
「じゃあバディ決めてる間に、割り振れるように内容ちゃーんと確認しろよ、面倒がらないで真面目に読めよ?」
ロビンは調査表をボスに押し付ける。
そうなのだ、ボスは資料をよく読まないで仕事を割り振る時があり、最近もトムが工場に調査に出向いたらランジェリー工場で、縫製をしているのが全員女性だった為白い目で見られた…という事があった。
忙しさ故だと信じたいが、それはそれで困る。
ボスはボスにしか出来ない仕事も多い。
だからと言って調査をスタッフに押し付けたりはしない。出来る限り自分の目で確認するし、必要があれば現場にも出向く。
ただ…ここ最近は仕事の依頼も急増しているうえに、私が事件に巻き込まれたりしていた為、思うように身動きがとれず仕事が偏っていたせいもあるはず。
「ボス決まりましたよ、リンダさんとロビン、エマちゃんとトム、ジェームズさんと私です」
「あら、あたしの読み通りね」
ボスは予想的中だったらしく、パッパと調査表を配りホワイトボードに誰がどの案件かを記載していく。
私は行動表にバディ同士の名前のついた磁器プレートを貼り付けていき、A、B、Cとそれぞれの調査にアルファベットで記入する。
「リリィは20代女性の依頼か〜」
ロビンが隣に立ち私の調査表を覗き込む。
「ロビンは60代女性ですか」
私も同じようにロビンの手元を覗き込む。
今までと何ら変わらない日常に嬉しさと幸せを感じられる。
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