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「あー、見つめ合ってるー」
エマちゃんがふざけた口調で揶揄う。
「こ、此処は職場ですよ、謹んでください」
真面目少年になったトムが若干頬を赤くしながらそんな事を言う。
「あら嫌だトム、何を想像したの〜、あーやってこーやってーって?ウフフ、トムの想像の斜め上をいくわよロビンは」
ウフっとこれまた色っぽく微笑んだリンダさんはトムに流し目を送る。
「まあまあリンダさん、トムには刺激が強すぎますよ」
ジェームズさんがリンダさんの発言を肯定するかのように付け足す。
「ロビン、女はねなんだかんだ言って優しいセックスが好きなのよ、激しいだけじゃダメよー、時々ならいいけど。ね〜」
ボスがストレートに言葉にしてリンダさんとエマちゃんに同意を求める。
…ってボス、それはどっち目線の意見なのよ。
「こらっ、オブラートに包めよ!そう言う話はなくていいから!」
ロビンはアタフタしている。
トムがチラッと私に視線を向けて、私と目が合うとパッと逸らした。
いやーわかりやすい。
うん、想像したのね、ロビンと私のそういうシーンを。
全く…この人達は…。
みんなは仕事そっちのけでギャーギャー騒いでいる。
そんなみんなと一緒にいられてやっぱり幸せを感じられる。
「じゃあ、今度みんなに教えてもらおうかな」
ボソッと呟いた私の言葉に
「え、何を?」
ロビンが首を傾げる。
「…どう誘ったらいいか、とか。どうしたら満足させられるか、とか?」
同じように首を傾げながらそう答える。
「…な、…、」
眉を跳ね上げたロビンにニコっと微笑んでおく。
そして、さっきよりももっとギャーギャー騒ぎだすみんな。
「キャー、なにそれカッコいいリリィさん!」
「ほう、あのロビンを黙らせるとはなかなか勇ましいですね」
「っていうか女性にそんな事言わすなんて…最低な男だな!」
「こらこら僻まないのよ、私が手取り足取りじーっくり教えてあげるわ〜」
「成長したわねーリリィ、ほんと優秀な部下を持ってあたしは幸せだわ〜」
騒がしいみんなを他所に、一歩私との距離を縮めたロビンは、
「…期待しちゃうぞ」
耳元でそう囁く。
「ご期待に添えるよう頑張りますね」
私もニッコリ笑って囁き返した。
会社で話すような内容の会話ではないが、これが我が社の日常。
今日も我が株式会社PEACEは安泰だ。
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