# Special edition

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「ねーねー、名前なんて言うの?」 ストンと真向かいに座った女子はニコニコしながら私に問いかける。 「サクラっていうの、あなたは?」 「私はリョウ、文学部の3年。あなた編入?見かけない顔だなって思って」 「そうなの、私も文学部よ、よろしくね」 リョウと名乗った女性はデニムスカートに大きめのパーカーというラフな学生らしさのある服装だった。 「サクラの彼氏ってなんていうの?」 「レンだよ、はじめまして」 スッと私の隣に戻ってきたトムはにこやかに自己紹介をして隣に座った。 「うわーお、並ぶと凄いね美男美女。2人とも目立ってるよ」 リョウはそういうと連絡先の交換をせがんできた。 「良いよ」 と、好感の持てる爽やかな笑みを浮かべスマホを差し出すトムに倣い私も交換する。 「今日は女子でしたね、このところ男子ばっかり声かけられてたからヒヤヒヤでしたよ」 リョウが去っていくとトムがフウッと軽く溜息を吐き出しながらそんな事を言い出した。 「こっちは寄ってくる人選べないじゃない」 「そうは言っても俺はロビンさんに怒られるの嫌なんですよ」 本当に嫌そうに顔を顰めてるのを見て思わず笑ってしまった。 今回の調査では裏方に徹しているロビンとボス。 無駄にイケメンなロビンはキャンパスを歩けば目立ってしょうがないから、今回ばかりは裏方。 日中会えないのは残念だけど、帰宅すれば会えるからそれまでの我慢になる。 「あー今ロビンさんに会いたいって思ったでしょ、ダメですよ、俺が彼氏ですからね」 「うん、わかってるよレン」 側から見ればおそらく仲の良いカップルに見えているだろう。 私が歳上なのは仕方がないけれど、それでもいいんだ。 そうじゃなきゃ困る。 調査に入っている意味がない。 「あー今日もエマは盛り上がってますねー、よくあんなに騒げますよねー仕事だって忘れてなきゃ良いですけど」 トムの視線の先には賑やかに騒ぐターゲットグループ。 その一員にすっかりと馴染んでいるエマちゃん。 「忘れるくらい打ち解けられてればいいんじゃない、短期間であそこまで入り込むの大変だと思うよ」 エマちゃんすっかり大学生になりきっている。 いつもよりずっと派手な服装にカラコン、マツエク。 サラサラの黒髪ミディアムストレートヘアはこの調査の為にグレージュに染められ緩やかなウェーブがかかった。 トムも金髪に近い明るめのブラウンに髪色をチェンジし、これまでの印象とはガラリと変えている。 私も腰まである外国人風のくっきりウェーブが印象的なウイッグをつけている。 「次の講義ではもう少し近づいてみようか」 「良いですけど、寝ないでくださいよ」 ごもっともなご意見にそれ以上意見できなかった。
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