# Special edition

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帰宅すると、今日はロビンの方が早かった。 キッチンからエプロン姿で出てきて出迎えてくれたロビンと軽く抱き合う。 チュっと甘いリップ音がおでこでして、フワリとウイッグごと頭を撫でられた。 「おかえり、今夜はエビチリと揚げ餃子だよ」 「ただいま、遅くなってごめんね、夕飯ありがとう」 まだ結婚はしていないが、つい先週新居が完成し引っ越したばかりの新しいお家。 共働きの我が家では夕食は作りたい方が作るというスタイルが定着した。 仕事で調査に入っている期間は移動距離も多かったりで疲れる事も多々あり、そういう状況はお互い様だから無理に家事をやる必要はないという結論に達した。 外食でもテイクアウトでも良いじゃないか、お互いが無理せず気を使いすぎないように生活する方がずっと大事だと思ったからだ。 独身期間が長かったロビンは、取り敢えず家事もスムーズにこなせるから夕飯作りも苦ではないらしい。 こうして一緒に暮らすようになって数ヶ月。 一緒のベッドで眠るスタイルは当初から変わっていないが仕切りのテープはあの事件以来なくなり、抱きしめ合って眠るようになった。 キスはおでこと頬には頻繁にしてくれるようになり、唇には触れるだけのキスを寝る時にするようになった。 この日も報告を兼ねた夕食の時間をのんびりと過ごし、順番にお風呂に入り、並んでソファーで寛ぎ一緒に寝室に向かう。 おやすみ、と、軽く唇にキスをされ緩やかに抱き合った私の頭のてっぺんにもキスをくれる。 それ以上は進まない。 いつもここまで。 …正直ここまで何の進展もない事に驚いている。 いや、それなりに進展はしているのか、新居に引越したし、ロビンのご家族と食事もしたし、結婚式の話もしている。 ロビンが色々リサーチして提案してくれるから、決して嫌がっている訳ではないはず。 私を大事にしてくれてるのはよく分かる。 言葉も態度も充分すぎるほど伝わってくる。 今までの彼氏とは違うんだよ、身体だけじゃないんだよって、そういうのもロビンはあるんだとは思う。 これまでのロビンの恋愛遍歴はなんとなーくわかる。 彼女が常にいたみたいだし、フリーの期間は大人のお付き合いもしていたみたいだし、その辺は皆んなとの話でもあったから本当なんだろう。 手が早そうって言ったら失礼かもしれないけれど、そういうイメージは正直あった。 気持ちを確かめ合う前からスキンシップは友達や同僚の域を超えていたし…。 だから、お互いの気持ちを確かめ合って、結婚する話は少しずつ進んでいるこの状況で、キス以上の進展がない事にかなり戸惑っている。 どうしよう…なんか私困っている。 体の関係がない事に戸惑っている。 おそらく…トムも私が戸惑っている事は気づいていると思う。 それでもその話だけはなぜか切り出す事が出来ないまま今に至っているわけで…、 もう、此処までくるとこのままでもいいかなぁという考えすら持てる。 そんな考えを抱きしめられた腕の中で悶々と考え、この夜もひっそりと更けていった…。
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