# Special edition

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暫く無言でスマホをいじっていると、ヒロキは溜息を吐き出した。 「お前さーなん、」 「サクラ」 何か言いかけたヒロキを遮って言ってやった、自分の名前を。 初対面のチャラ男にお前とは呼ばせたくはない。 「…サクラ」 「うん、なに?」 「…いいや、なんでもねー」 「そ?じゃあハンバーグ買いに行こう、私1人じゃ持てないよ」 若干不満げな表情にも見えるけど気付かないフリをしてテイクアウトしに向かった。 ヒロキはサッサとお目当てのハンバーグを自分の分だけ注文した。 私は当たり前のように3人分注文して、 「ヒロキ、悪いんだけど一個持ってくれない?」 「は?なんでだよ、俺関係なくね?」 そう言うとサッサと席に戻ってしまった。 チッ…せー男だなぁ。 危ない危ない舌打ちしそうになっちゃたよ、嫌だねーこういう男性は。 気を取り直してとりあえず2つ持って席に戻ると、ヒロキはサッサと食べ始めてる。 おいおい、君は王様かい? 呆れながらハンバーグのトレイをエマちゃんとトムに先に渡す。 2人がもう1つを取りに行こうとスマートに動き出すからそれを制して自分でもう一度取りに戻る。 そう、この姿勢をヒロキに見せつけなきゃ意味がないの。 エマちゃんとトムは目の前でそれを観察してなきゃいけないの。 ヒロキがどんな態度を取るかで今後のヒロキとの接し方を決めないとならないんだから。 私のそういう心情を汲んでくれたらしい2人はちゃんとヒロキを観察していてくれた。 ランチ後エマちゃんはヒロキと連れ立ってグループに戻り、トムと私は恒例のキャンパス内の散歩を開始した。 「デザート代返して貰った?」 「はい、かなり嫌そうでしたけど、エマが『こんくらい小学生だって払うよ』って言いながら自分の財布出したら渋々ヒロキも出しましたよ」 「そっか、良かった。きっとああ言えば誰かは買ってきてくれると思ったんだろうね。あわよくば奢って貰えるって。」 「エマに言ったんですかね」 「さあ…私達かな。どっちにしてもああ言う言い方はないよね」 「ムカっとして勝手にアイス買っちゃいましたからね、しかもエマが高い方をワザとヒロキに買ったんで」 「ヒロキが要らないって突っぱねたら3人で見せつけて食べようって考えてたの」 「あーそれはそれでやってみたかった気もする」 そんな会話をしながらこの日もキャンパス内の散歩という名の勝手なパトロールを終了してターゲットグループの様子を観察していた。 講義は真面目に受けているから単位はやはり大事らしい。 すると、講義中にもかかわらずヒロキがチラッと私達の方を振り返り意味深に笑った。 トムと2人、なんだ?と首を傾げたがそれっきりヒロキはなんのアクションもしない。勿論周りの子達も。 …なんだろう、さっきの仕返し? なんか企んでいるのかな…。 トムがせっせと報告書を仕上げている隣で、また睡魔と戦い始める。 どうしても講義が退屈で仕方ない。 だんだん下がっていく瞼に、まずいまずい…とハッとした時、 グループ内でリョウが何かを配り出すのが目に入った。 そっと肘でトムを突つく。 「キャンディーですか」 「やっぱりそう見える?」 「はい…、エマは口に入れてないけど他は食べてるように見えますね」 「色とりどりあるように見えます」 キャンディー…、まあ講義中こっそりと口に入れるのはおかしくないけど、さっきのヒロキがこっちを見て笑った事が気になっていたせいか、そのキャンディーが何か意味あるように思える。
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