# Special edition

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あれ…、帰るのかな? 調査に入って2週間、あのグループはみんな真面目に講義を受けレポートも提出していた。 でも、今日はグループ内の2名の女性と男性1人が帰っていく。 残っているのはリョウ、ヒロキ、エマちゃんと名前の分からない女性1人男性1人の合わせて5人。 帰っていく子達の後を追いたいけれど、残っている子達も気になる。 「ジェームズさんに連絡入れました」 「うん、ありがと」 今日はキャンパス内にジェームズさんが居る。 トムがジェームズさんに帰って行った子達の特徴や服装を送信している間、私は引き続き観察を続ける。 結局何ら変わりはなくこの日も終わった…ように思えたが…、 「ねえねえ、飴ちゃん食べる?」 帰り支度をしているとリョウがキレイな色のキャンディーを差し出してきた。 「え、いいの?」 「はいどーぞ」 「可愛い色だね、どこの?」 「これねーアタシの手作りなんだ〜、スイーツ作りが趣味なんだけど最近キャンディー作りにハマっちゃって」 私とトムの掌にピンクとグリーンのキャンディーを載せたリョウはバイバイと手を振り帰って行った。 「もう怪しさしかないんですけど」 トムが胡散臭そうにキャンディーを掌で転がす。 「ジェームズさんに渡そう」 私はジップロックの袋にトムの分も入れて帰路についた。 その日の午後20時、オンラインでミーティングが行われた。 「エマ、無事?」 ボスは開口一番に問いかける。 「なんとか、って感じです。遊びのお誘いはしつこいんですけど、バイトって言って逃げてます」 エマちゃんは盛大に溜息を吐く。 高級会員制クラブで働いていると大嘘をついているらしい。 そこのクラブはリンダさんのお知り合いの方が経営している所なので、融通をきかせてもらいエマちゃんがバイトしているという事にしてくれた。 実際、一見さんお断りで本当に入店が厳しいので学生はまず入れないのだ。 ターゲットグループのメンバーの親が会員になっていないかどうかは調べてあるのでバレはしないだろう。 「家バレはしてないんでしょ〜?」 リンダさんは心配そうな表情。 「キャンパスでバイバイするようにはしてますけど、今日はヒロキがしつこかったですね」 「じゃあ…俺が迎えにいく?兄ちゃんって事にすればいいんじゃん?」 隣でロビンがそう提案する。 「ロビンかー、後が面倒になるからなぁ」 エマちゃんはそう言うとまた盛大にため息をついた。 「なんで俺でもいいじゃん」 不貞腐れ気味のロビンに苦笑いしながらボスも 「アンタじゃダメよ、騒ぎが大きくなって面倒じゃない」 と嗜める。 「おれも大学行きたい」 未だにキャンパスに入っていないロビンは拗ねる。 「次の日大学行ったら質問攻めにあうじゃないですか、それも対応しなきゃいけなくなるからエマちゃん疲れちゃいますよ」 私はそう言って宥めるが、 えー、っと口を尖らせる。 …辞めなさい、35歳だよ貴方。イケメンだからそういう表情も良いけどさ、一応Webミーティング中なんだから。 「じゃあーあたしがー」 とリンダさんが言い出した言葉を、 「リンダはダメよ、男ども食い散らかしそうだからダメ。絶対にダメ。あたしが行くわ」 ボスが即座に止めた。 これで明日からのエマちゃんの帰路は安泰だろう。 キャンパス内ではトムと私が割と近くにいるし、ジェームズさんもキャンパス内のどこかにはいる。明日からはボスも午後はキャンパスに入ることになったから心強い。
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