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それからというもの、時々こんなふうに急に付喪神が現れるようになった。
鉛筆やボールペン、定規とかもあった。他のノートから現れた付喪神は、最初のノートの付喪神とは違う顔だったし、話し方も違った。
使いきったら会えなくなる。
だったら使わなければいい?
晴香がそう考えたのはごく普通のことだろう。でもどうやらそれは駄目らしい。
教えてくれたのは、今よりももっと背が高かった頃の、深緑色の鉛筆の付喪神だ。
「ボクたちは必要とされていない物には住めないんだ」
「消えちゃうの?」
「ううん。使われなくなったら、他のところに行くんだよ。大事に使われそうな物のところへ。それは晴香の持っている鉛筆じゃないかもしれない」
「どこかへ行っちゃうのか」
「だからここにいる間は晴香の役に立ちたいな」
「うん」
付喪神が現れる文房具は少ないけど、晴香はどんな物でも出来るだけ丁寧に最後まで使うようにしている。
そして付喪神がいた文房具は、眠りについてもう現れなくなってもこうして引き出しの中に置いている。
一つ一つにそっと触れて、まだ出てきてくれる付喪神と話して、それからそっと引き出しを閉めた。この引き出しの中にあるのはもう、眠りかけた付喪神ばかりだから。
二段目の引き出しには、すごく元気な付喪神が付いている文房具が二つある。
一つは花柄のマスキングテープで、オバサンみたいな付喪神だ。
「あらー、晴香ちゃん。最近あまり使ってくれないわねえ」
「今、大学が休みだから」
「大学生はいいわねえ」
「そうでもないんだけどなあ。私も結構忙しいんだけど」
「あらそう?」
「お正月が過ぎたらまた使うからよろしく」
「はあい。じゃあよいお年を」
「またね」
勉強するときに出したら、マステのオバサン付喪神はちょっと口うるさい。それでも机に着いたら引き出しから出して、ここぞというときに少しずつ、大切に使っている。お気に入りの花柄だから。
もう一つはハサミで、これは中学生くらいの男子だ。ちょっと口が悪いけれど面白い。
「なあなあ、俺も一緒に実家に行ってやろうか?」
「いいよ、ハサミは留守番しててよ」
「えー」
けっこう鋭いハサミで、持ち歩くと危ないから、仕方ないよ。
マスキングテープとハサミの付喪神たちに年末の挨拶をして、二段目の引き出しを閉めた。
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