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駅を出て空を見上げると、雪がチラチラと舞っている。
大きな荷物を持って、晴香は歩き始める。
正志の実家は、駅から晴香の家に向かう道のちょうど真ん中くらいだ。
久しぶりに家の前に立って、二階の正志の部屋の窓を見上げる。いつもここから手を振ったら、降りて来てくれたっけ。
晴香は本の入った紙袋を手に取った。
――半年間仕舞っておいたこの気持ちを、ちゃんと片付けよう。
「大丈夫よ。頑張って」
紙袋の中から、小さな声が聞こえる気がした。
カタン。
ポストに本が落ちた音と同時に、ドアが開く。
そして驚いて目を見開いた晴香の目の前に、懐かしい正志の顔が……。
―了―
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