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昇降口では、妹の双葉と福原薫くんが私を待っていた。二人とも1年生で、薫くんは幼馴染で双葉の恋人。
私とは見た目も性格も正反対の双葉とザ普通の薫くん。
私を見つけると、双葉が目をキラキラさせて駆け寄ってきた。ふわふわロングの髪の毛が揺れて、こういう犬いるな……と思わせる。
「お姉ちゃん!昨日話したこのカフェ!いちごのケーキが美味しいんだって!!可愛くって、絶対映えるよ!!」
スマホの画面を見せながら興奮気味に話している双葉。手を大きく動かしてジェスチャーまで入ってくる。
カフェが大好きな双葉。お店の雰囲気やメニューもSNSを駆使して、情報を集めるところはさすが現代っ子と思わずにはいられない。気になるお店を見つけては、映える写真を撮ってアップして、いいねをもらうまでが彼女のカフェめぐりだったりする。
双葉の後ろでは、薫くんが申し訳なさそうな顔をしてペコリと頭を下げた。
「はいはい。じゃあ、双葉おすすめのカフェに行こうか」
興奮して鼻息の荒い双葉にやんわり靴を履くよう促す。昇降口では同じように帰宅する生徒や部活に向かう生徒でごちゃごちゃしていた。生徒たちの波に乗って駐輪場まできた私たちは一度自転車を取りに別れた。
生徒の約9割が自転車通学をしているこの高校では、学年毎に駐輪場が別れていて、昇降口と同じようにこちらも生徒でごった返していた。
最寄りの駅まで自転車で20分、高校の近くのバス停は過疎化のためか1時間に1本、夜7時までのバス運行予定になっている。これだから田舎は…と聞こえてきそうな程、周りには山と田んぼが多い。
私の自転車の隣には、友達の春日優芽がいた。自転車の前かごにスクールバッグを入れた彼女と目が合うと、お互いにっこり微笑んだ。
「お疲れ~。6時間授業やった後のチャリってきついよね」
「そうだね。優芽の家って自転車で30分位だっけ?」
「そうそう。一葉んちは電車だっけ?」
「うん。電車で5駅」
お互い通学距離が長いよね……と肩を落とす。
ほとんどの生徒が同じような通学距離なので文句の言いようもないのが悲しいところ。 山に囲まれた豊かな自然と自由な校風で、偏差値は平均の学校に生徒が集まるのは、地元の企業への就職率が高いためだった。
多少通学に不便でも目をつぶるしかない。
駐輪場で優芽と別れたあと、私は双葉と薫くんと合流して、駅前のカフェへ向かった。
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