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「その男子生徒たちってどうなったの?」
博人の声音や瞳からは、自分に対する恐れや嫌悪の類は感じられない。その事件は、俺と周囲との関係性を決定づけるモノだったのにも関わらず。
物心つく前から俺には、普通の人には見えない異形のモノが見えていた。それは黒いモヤだったり、白く光るものだったりと、形を成さないものもある。形を成すものであれば、虫だったり獣だったり、或いは人の形をしていたり。例え人の形をしていても、色やパーツの大きさの違いから、普通の人間とは明らかに異なった。
最初はそれらが他人には見えないということがわからなくて、見たものをそのまま口にしていた。恐らく本当の両親に捨てられたのも、それが原因なんだろう。孤児院時代は、周囲の孤児たちからよく「嘘つき」と言われ、遠巻きに恐れられていた。
九歳で今の養父母に拾われると、それらを口にしてはいけないと教えられ、水晶で出来た数珠のブレスレットを貰った。魔除けなのだと。有難く貰ったものの、ハッキリとは見えなくなっただけで、依然として異形のモノは見えるし気配も感じる。だが、俺のことを心配してくれる彼らの優しさが、とても嬉しかった。
小学校では極力その力を隠すことに注力したが、それでも周囲に隠し通すことは出来なかった。最初は俺の力を理解しようとしてくれた人もいたが、すぐに恐れるようになり離れていく。それでも良かった、俺には養父母がいたから。彼らが俺を大事にしてくれるので、友人がいなくても全然平気だった。
しかし、その日は突然訪れた。俺が初めて、俺の中にとんでもない化け物がいるのだと自覚した事件が。
小学五年になると、俺を遠巻きにする者だけではなく、攻撃する者が現れた。それらは徒党を組み、俺に石を投げ、足蹴にする。彼らには、水晶を身に付けていてもハッキリとわかるほど、頭や肩、腕や足に異形のモノが絡み付いていた。
単純に性格のせいではないとわかると、かえって彼らを恨む気にもなれず、回避できる状況は極力避けたが、ある日彼らに大きな橋の下へ連れられ、寄ってたかって暴行を加えられた。
ある時点からの記憶はない。ただ、耳の遠くでバリバリと固いものを噛み砕くような音が聞こえ、気が付けばそこには複数人の血溜まりがあり、俺以外の人間の姿は全て消えていた、というだけだ。
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