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「なぁ忌一、五組の斎藤さんて可愛いと思わない?」
「……」
二年に進級しても、博人との関係は続いていた。博人は俺を恐れるどころか、日に日に馴れ馴れしくなっていく。相変わらず俺はというと、博人以外の人間と一言も喋っていない。部活も完全なる帰宅部だ。
それはそうだろう、俺の中にはとんでもない化け物がいるのかもしれないのだから。安易に他人と関われるわけがない。だから俺は博人と会う時も、誰も寄り付かないこの別棟の屋上で昼飯を食べる時だけと決めていた。
「あれ、もしかして知らない? 学年中の噂だぜ? 性格もいいらしいし。それとももしかして、忌一にはもう好きな子いるとか?」
「……」
「何だよ、教えろよ」
あまりにもしつこいので、食べかけのジャムパンを頬張ると、ズボンのポケットから携帯を取り出し、ある画像を見せる。
「俺の従妹」
「うわぁ……。忌一ってロリコンだったのかぁ……気持ち悪っ!」
ばい菌でも持つように携帯を俺の膝へ投げ捨てたので、俺は思わず「おい!!」と怒鳴った。画像は五年前の正月に祖父母の家で写した家族写真で、俺と従妹の茜が二人で並んでいる部分だけを携帯で撮り直したものだ。
そこには当時十二歳の俺と八歳の茜が、ピースをしながら笑顔で写っている。最近は俺の能力を恐れてか傍に近寄ってもくれなくなったが、この頃は随分俺に懐いてくれていて、本当に可愛くて仕方なかったのだが。
(いつまでもこの頃の写真を持ってるのは、さすがにアブナイか……)
こういう客観的な意見は自分自身では気づけないので、博人の存在にこっそり感謝した。
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