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平穏は打ち破られる為に存在しているのかもしれない。
俺のスマフォが急に鳴り響き、平穏の終了を告げるのだ。
「野地くん。仕事の依頼だと良いね~」
水氷の気だるい声を無視するかのように、スマフォに出る。
相手の声から、仕事の依頼と瞬時に察知し、隣の部屋に入り込む。ドアをしっかりと閉め、水氷を遮る。
常に秘密が付き纏う仕事だ。相手が警察でも、守り通さなければならない時がある。俺自身が犯罪者になってでもだ。
スマフォからの声で、何度か仕事を受けたことがある依頼主だと分かる。こいつからの仕事は、いつも危険が付きまとう。こいつの依頼を受け続けていたら、そのうちくたばるだろう。
だが、報酬はかなり弾んでくれる。資本主義が創り上げた泥沼に溺れる俺は、金の魅力に押し切られ、依頼を受けることになるのだ。
犯罪の香りしか漂わない、危険な仕事を……。
今回の依頼は、ある人物のボディーガードだ。簡単に思える仕事だが、こいつの依頼だ。決して簡単に事は運ばない。早くも危険極まりない空気が、漂ってきたような気がする。
依頼のやり取りが終わり、ドアを開ける。
相変わらずソファに、にやけながら寛ぐ水氷がいた。
「悪いな。お前と遊んでいる暇はなくなった。仕事の依頼だ」
俺は冷たい感じの声を響かせる。
「良かったね~。まっ、頑張ってね。死なない程度に」
嫌らしい笑みを浮かべて、水氷は事務所を後にする。
俺は髪型を適当に整え、濃紺のストライプスーツに着替え、ダークでダブルのトレンチコートを身に着けて、事務所を出る。先ずは依頼主から指示された場所に向かうことにした。そこに今回の仕事の真の依頼主がいるからだ。
俺が守らなければいけない人物が……。
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