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それにしても、先が見えない。どこまで弘崎を守り抜けば良いのだ。
とにかく敵のレベルの高さは半端ではない。
国が絡んでいる。
最も警察が動いているとしたら、お手上げだが、俺をつけてきた連中は、警察官と言う感じではなかった。
俺は弘崎に視線を移す。
「よろしくお願いします。他に頼れる人間がいないもので」
弘崎は声に震えの振動を伝えながら、俺に話しかけてきた。
「悪いが、どこまでやれるか分からない。やれるとこまでやる。今はそれしか言えないな」
弘崎は静かに小さく首を縦に振り頷く。
「お前が握っている機密のデータは何処にある。教えてくれないか」
「データベースでは残していませんよ」
弘崎は呟くように答え、少し間を置き、自分の頭を人差し指で突くような感じで指した。
守り抜けとはそう言うことか。
「ないなら構わない。ただし、万が一捕らえられた場合は、俺にデータを渡したと嘘をつけ。それなら捕らえられても、直ぐに命を奪われることはない。わかったな」
弘崎は俺の指示に静かに頷いた。
「それと、明日からの潜伏先だ。このメモ通りに行動をしてくれないか」
俺は弘崎にメモ書きを渡した。次の潜伏先だ。通常ではあり得ない交通手段による行き方もメモに記しておいた。
「外に出る時は、帽子とサングラスを着用してくれよ」
俺は少し笑みを浮かべた。緊張状態が続いてしまったら、一般人では身が持たない。
極端な変装をする必要はない。帰って目立ってしまう。多少分かりにくくしてもらえればそれで充分だ。
次の潜伏先へは一人で移動してもらう。二人で移動をしたら、返って目立ってしまう恐れがあるからだ。
各所に防犯カメラが設置されている。顔が敵には割れている状況の中、二人で動いていては返って目立ってしまう。
常に裏通りを歩いている二人組の男なんて、変に目立つだけだ。
一人の方が目立たないし、多くの人間の中に埋もれてしまうだろう。
とにかく、弘崎には次の場所に移動をしてもらい、俺は一旦、事務所に戻ることにした。
事務所には一人で戻る事を選んで正解だった。事務所の近くに差し掛かってから、やたらと鋭い視線を感じたからだ。
俺は事務所に戻るのを止め、駅を目指し、弘崎とは関係のないビジネスホテルの一室を抑え、休憩をとることにした。
ホテルのパソコンを使い、あいつに連絡を取った。今回の仕事でどうしても必要となる品物だ。俺の事務所のパソコンは敵の管理下だろう。最もあいつのパソコンも敵の管理下に入っているかもしれないが、俺とあいつで事を取り交わす際には、暗号を使っているから、大丈夫だろう。
付き合いが長いと、色々な事が可能になるな。
問題は明日だ。
ここを出てからが一仕事になる。
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