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袋小路
深い眠りにつくことはなく、疲れの残った嫌な感じの朝を迎える。どんな夢を見ていたかなんて、覚えてはいない。思い出したところで、特に何か良いことがあることもないだろう。
俺はビジネスホテルを出て、街中を宛もなく歩く。今頃、弘崎は別のビジネスホテルへと移動をしている筈だ。アナログな連絡方法も悪くはない。
ただ、弘崎に会うには、尾行を巻かなければいけない。既に何名かが俺に張り付いている。昨日のようには上手くはいかないだろう。
尾行を振り切る方法を色々と模索しながら、身体は勝手に狭い路地へと入っていく。
自分に合わせた変に規則的な感覚が、背中に伝わってくる。
路地の片隅に灰皿を見つけ、立ち止まり、煙草に火をつける。喫煙者にとっては、不便な時代になったものだ。溜息と一緒に煙を吐き出すと同時に辺りを見回す。
人影は見当たらない。
最も、このくらいでボロを出すような奴らでないことくらい、分かってはいたが、何となくやってしまった。身についてしまった、くだらないセオリーだ。
煙草を吸うのを止め、再び歩き出す。
狭い路地を歩き、再び広い通りに出る。
素早く狭い路地に戻る。
動きが一瞬だが乱れた人間が一人いた。奴が尾行している奴らの一人で、間違いないだろう。
しかし、一人見抜いたところでどうにもならない。
一人で尾行をするなんて、バカな方法をとるような連中ではない。
俺は薄暗い世界観に吸い込まれるかのように、狭い路地を歩きだす。
右に曲がる。
走り出す!
左に曲がる。
建物の壁に貼り付く。
真っ直ぐに走り去ろうとした男に足を引っかける。
男は勢いよくスライディングをするかのように倒れ、俺を睨みつける。
俺は走り出す。
狭い路地は少し開けて、少し広い場所に辿り着いたが、正面は高い金網のフェンスが建っている。
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