袋小路

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 俺は振り向く。  三人の男達が、走るのを止め、俺にゆっくりと迫ってくる。  一人は昨日の奴だ。整った鼻髭で、外国の俳優のような顔立ちの男。後の二人は初めて見る顔だ。二人とも目つきは異様に鋭く、一人は馬面、もう一人は猿顔だな。  俺はゆっくりと後ずさりをし、フェンスを背にする。  馬面が右の拳を真っ直ぐに飛ばしてきた。左腕を絡ませて、右の拳を横に振り、わき腹に叩き込み、左の膝蹴りを腹に叩き込んで、突き飛ばす。  猿顔が突進をして右の拳を俺の顔面に叩きこんできた。  ふら付くも、猿顔の左の大振りの拳を、体勢を低くしてかわし、身体を捻って左の肘を脇腹に打ち込み、右の拳を猿顔の顔面に打ち込み、後退をさせた。  髭は真っ直ぐに蹴りを、俺の腹に叩きこんできた。衝撃と勢いに押され、フェンスに叩きつけられる。  息が止まるかのような衝撃に、思わず声を上げてしまったが、飛んできた右の拳を、体勢を低くしてかわすと同時に、タックルで倒して、右、左と拳を顔面に叩きこむ。  馬面の蹴りが顔面に襲い掛かってくる。両腕で何とかガードをしたが、弾き飛ばされ倒れ込むも、素早く立ち上がる。  猿顔が体を捻るように回し、蹴りを打ってくる。後ろに下がってかわす。  馬面の右の拳が俺の顔面を捉えた。  脳天を直撃したかのような衝撃にふら付くが、追撃の左の蹴りを両手でしっかりと捉え、力任せに押し倒して、胸に蹴りを叩き落す。  髭の蹴りが俺の腹に叩きこまれる。息が止まり、鉛のような重さの苦痛を体内に覚え、思わず右手をついてしまう。  立ち上がるが、右、左と拳の連打を顔面に打ち込まれる。ふら付きながらも、右の拳と相打ち覚悟で、身体を横にして左の蹴りを腹に叩き込む。  髭に尻もちをつかせたが、猿顔の右の拳が俺の顔面を打ち抜く。  俺はよろめき、フェンスに凭れ掛かり、荒々しくも雑な金属音を響かせる。  髭と馬面もゆっくりと立ち上がる。  三人の男達は、顔の血を手で拭いながら、多少のふら付きを見せるものの、ゆっくりと俺に迫ってくる。 「は~い。そこまで~。傷害罪の現行犯ね~」  聞きなれた嫌な感じの低い声が響き、三人の男達の動きが止まる。  水氷だ。  水氷の指示で、刑事達は俺に襲い掛かってきた三人の男達を連行していく。  どうして此処に。 「野地く~ん。大分男前になったね~」 「多勢に無勢だ。そんな事より、どうして此処が分かった」 「人に色々と依頼をしておいて、冷たい対応ね。助けてあげたのにお礼もなしなの」 「頼んだ覚えはない。こいつらだけでなく、お前らも俺をつけていたのか」 「そんなところだけどね」  ニヤニヤと笑いなながら、意地の悪い感じで答える。  悪意のような物を感じてはいたが、ここは冷静になってみた。  水氷には調べ物を頼んでいる。客観的に見れば、俺は水氷に助けてもらったことになるだろう。  ここは大人しく引き下がることにした。  俺は大人しく水氷に同行することにする。  
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