メイドエプロンな時間

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メイドエプロンな時間

次の朝 教室に入ると 西くんは 数人の男子と 楽しそうにおしゃべりしていた 休み時間も 普通に 男子たちと 仲良くやっていた けれど 授業中 何度も 「学校終わったら 一緒に帰るよね?」 と 私に確認してきた 「うん」 と 何度も返事したのに 4時間目の国語の時間 西くんは 「約束だよ」 と 机の陰で 右手の小指を出した 私は 右手の小指で 指切りした きっと 何か不安なんだなあ 昨日までとは違う気持ちで 西くんを思う 自分がいた 学校が終わり 私は もう 迷うこともなく 西くんの家に行き ヒラヒラのかわいい メイドエプロンをつけて 鏡を見て 自己満足して 掃除を始めた 「床に掃除機かけて」 「窓ガラスをこれで拭いて」 「バケツの水を取り替えて」 私が命令すれば 西くんは 素直に従った メイドエプロンをしていても 掃除中は 私が ご主人様だ 西くんの部屋に使おうと決めた 二階の南側の部屋だけは その日のうちに すっかりきれいになった 「誰か 友だち来てるのか?」 階下から声が・・・ 「あ パパ 僕のカノジョ サンちゃんだよ 掃除してくれてるんだ」 西くんのパパは 二階に上がって来た   ルパン三世の次元(ジゲン)そっくり 黒っぽいスーツを着て 細くて 髭はやして 髪もちょっと長くて メチャ カッコいい! 「初めまして 鉄地(てつち)河原(かわはら) サン と言います よろしくお願いします」 私は 心のどこかで このメイドエプロンをつけた自分は まあまあ かわいい という 身勝手な自信があって 意外と落ち着いて 挨拶できた 「ああ 鉄地(てつち)河原(かわはら)さんの お嬢さんか お父さんにはいろいろお世話になってるよ で? サン って名前なの? この辺の山奥は まだまだ神や魔物が住んでいそうだもんなあ もののけ姫だって いても不思議はないよなぁ?」 さすが 西くんのパパ 言うことが ヘン 「昨日の夜 サンちゃんの家で 夕食 ご馳走になったんだ 帰りは サンちゃんのお父さんが車で送ってくれたよ」 西くんは さっそく報告した 「おおお それはそれは サンちゃん ありがとう よくぞ この変人息子を手なずけてくれましたな さすが もののけ姫じゃ かわいい顔して なかなかのツワモノよのう!」 ジゲンは いや 西くんのパパは そう言って  メイドエプロンで変身した私に 銃を向けるポーズを決めた  第1話  完
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