ぴっかぴかのまぬきちさん

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「怖くて農民に?」  ご先祖様のおかげで勝ってすごいって、ボクは思ったのに、がっかりした。しかも、まぬけでしかない“まぬきち”という屋号ははずかしいと思えてくる。 「そう。だけどね、まぬきちさんが農民として暮らしたおかげでボクたちはいるんだよ」 「どういうこと?」 「まぬきちさんが戦わずに生き残ったことで、お父さんや健太が産まれたんだよ」 「そっか」 「それに、畑をぴっかぴかに育ててくれたことで、今日までこの地を耕し暮らせて、子孫繁栄したんだ。山田家にとって、まぬきちさんさまさまなんだよ。  だから、ウチはまぬきちさんの想いを受け継ぎ、ぴっかぴかが家訓で、ぴっかぴかのまぬきちさんが屋号なんだ」 「そうだったんだね」  まぬきちさんが生きぬいたからボクがいて、まぬきちさんが畑をこさえたから山田家は続いてきた。  それはぴっかぴかのおかげで、山田家はずっとぴっかぴかを心に、お父さんやボクまでつながってきた。ぴっかぴかバトンだ。  バトンをボクが落としたらどうなる? ここまでつながってきたのに、とぎれさせるのは悪い気がしてくる。 「ボクもまぬきちさんの想いを受け継ぐよ。ぴっかぴかを頑張るよ」  つめがよく見えるようにお父さんに手をだした。ぴっかぴかにしてもらうために。 「うん。顔もぴっかぴかだね。それでこそ、ぴっかぴかのまぬきっさーのせがれだ」  そう言ったお父さんもぴっかぴかの顔をしていて、それを見ていたお母さんもぴっかぴかだった。
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