▼11:義弟ではない、男の顔

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  「ラ、ラドルフ……ッ」 虎視眈々と獲物を狙う猛獣の如く。 月光に照らされて、妖しく光る金色の瞳が私の胸元を捉える。 (とは言え、こ、これ以上は……っ!) 前世からも含めて今現在まで、男との経験はほぼ皆無に等しい自分には、キャパオーバーだ。 慌ててラドルフの胸板に手を当てて、必死に抵抗の意を見せる。 目元がじんわりと熱くなり、無意識に涙が両目に滲んだ。 「……っ」 胸元に触れる寸前。 私の顔を見てピクリと反応したラドルフの指先が、止まる。 その指先の向かう場所が変わり、零れ落ちそうになっていた私の涙をそっと掬った。 「……ごめん、姉さん。意地悪し過ぎたね」 「ラドルフ……んっ」 チュッと軽く涙の後を追うように、両目の端に口付けられて、ラドルフの胸元に縋っていた両手からもようやく力が抜ける。  
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