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ああ……いつものラドルフだ。
「姉さんを泣かせる気はなかったんだ。本当にごめん」
「……うん」
幼子を慰めるように、くしゃりと私の頭を柔らかく撫でた後、首元に鼻を埋めるようにして抱きつかれて、つい頷いてしまう。
普段の私なら、悪態のひとつでもついてやろうかと思うところだけど。
初めて見た、弟ではない男の顔をしたラドルフに動揺したのと、
スリスリと甘えるように頬擦りされては、怒ろうとしていた気持ちもどこかに行ってしまった。
(結局のところ、私もラドルフに甘いのよね……)
「……許してくれる? 姉さん」
「……許さない、って言ったら?」
報復とばかりに、少し意地悪な返しをしてみたら。
予想通り、ビクリと震えるラドルフの肩。
私の首元から僅かに顔を上げたラドルフと目が合うと、耳垂れた犬耳が幻で見えるほどにしゅんと反省の色を滲ませた眼差しが私を見つめてくる。
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