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「わぁ……」
綿菓子のような雲が、段々と冬に近づく秋晴れの空を漂う晴天の下。
真っ白な壁に赤い三角屋根のコントラストの建物などが連なり、沢山の人々や馬車が行き交う足元には色彩豊かなレンガ調の道。
それはまさに、おとぎ話から出てきたかのような。
何度見ても、新鮮な光景で。
ワクワクと心踊る気持ちに、今すぐにでも走り出したい位だったんだけど。
「──なぜ、婚約者との逢い引きに弟の君まで付いてくるのか?」
「それはいくら殿下と言えど、結婚前の姉の身に何かあっては困りますから。弟の自分が付いてくるのは当然です」
「ほお……一国の王子、勿論彼女の身にも危険など起こらないよう、護衛は後ろで控えているのに?」
「そういう意味での“危険”も含めて、です」
(はあ……せっかくのお出かけ気分も、これが無ければ最高なのに)
白いブラウスに黒のコルセットを巻き、足首までを隠す丈の茶色のロングスカート。
裾には緑の縁取りを乗せて、編み込み形式のブーツを履いた私の髪は二本の三つ編みに緩く編んでもらい、いわゆる町娘スタイルの本日。
肩を落とす私の後ろでは、レイモンド殿下と、弟のラドルフが対立する形で火花を散らしていた。
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