▼01:社畜街道と、乙女ゲー

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──キィ。 凭れかけた反動で、椅子の背もたれが軋んだ音を立てる。 ふと思い出す、テンプレートな昼間のやり取り。 『……ごめんね。倉本(くらもと)さん、これもお願いしてもいい?  実は今日、どうしても外せない用事があって──』 『え、あ……はい……』 どうせ嘘だと分かっていながら、反射的に頷いてしまう。 一言。 ごめんなさい、私も自分の仕事があるので。 そう言って、断ってしまえばいいものを。 私はいわゆる、イエスマンという奴で。 断る、という行為が昔から苦手だった。
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