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熟睡していた大和が突如として目を覚まし、身体をビクリと震わせる。
「…………」
彼は薄暗い部屋の中、目だけを動かして自室を確認するが、再び何事も無かったように目を閉じて眠りに付いた。
このまま大和が翌朝まで目を覚ますことは無かったが、誰も気付かないところで異変は静かに起きていた。
それは大和以外の誰も知ることの無い、長い1日の始まりであり――、
世界中の誰もが、大和が世界を救った英雄であることなど気付かぬ聖なる夜の話であり――、
彼の人生にとって、最も過酷で孤独な奮闘の幕開けであった。
◇
闇――、
見渡す限りそこは一面の暗闇だ。
陽の光も無く、星も輝かない中、人が迷い込めば、自分の目が何も見えなくなってしまったのではないかと錯覚するほどの黒一色が漂っている。
しかしそんな視覚が失われた世界にも音が生まれる。
水に近いが違う。もっと低く鈍い音だ。
まるで流動体が漏れ広がるような、ドロドロと滞留を生む音。
やがてその世界にもう一つの音が生まれる。
それは「声」であり、
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