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「いかんいかんいかん、どれだけ時間を遡って浸食されているんだ。想像以上に深刻な弊害じゃないか」
暗闇の中に幾つかの色が現れた。
それは仄かな赤や緑、青といった色とりどりの光だ。
宝石のように小さな光源が虚空を漂い、一定の円を描く動きを見せて、中心に居る人物の周囲を惑星のように飛び交っている。
中央にいる何者かは暗闇と同じ色のスーツを身に纏い、斜め上方を見上げていた。
そこにはA4サイズ大の紙のようなものが数枚浮いており、文字とも図形とも判断できない謎の記号が記されている。
「ここは処置が間に合ったが、こっちは……手遅れか。ああクソッ! あの性悪魔女め、向こうで再開した暁には私の気が済むまでその身体を弄んで――」
何者かは一人で憤り、目の前に浮いている一枚の紙に目を止めると、それを手に取って矯めつ眇めつ書かれている幾何学模様に目を通した。
「これは……冗談では済まされないぞ。「狭間」の狂い、時間流の逆転、時系列の寸断と無作為な結合……まさか彼女が原因の引き金だったとは」
ギリ、と歯噛みする音が響き渡る。
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