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宝石のような装飾は無く、美しい銀色をした金属塊がぶら下がっているのみだ。
「歴史は繰り返す、とはよく言ったものだが……こうして繰り返すものではないぞ人類。そして繰り返させるものでもないよフィリア」
誰に向けて発したものでもない言葉は、虚しく白い部屋に溶けて消えた。
◇
「――うぅっ、寒っ!?」
その日、大和はあまりの寒さに目を覚ました。
目覚まし代わりのスマートフォンを確認すると午前5時を回ったばかり。起きる時間にはまだ早い。
大和は寝ぼけ眼で頭を掻き、
「あっれぇ~? おかしいな……」
12月ともなればこの時間帯は冷え込みも厳しい。
備え付けの暖房を4時半にセットしてあったはずだが、この寒さから作動していないことを理解する。
「設定間違えたかな……確かにタイマー予約してたはずだけど」
薄暗い中、寒さを我慢して身体を起こした。
ベッドから降りるために足を横へ動かした直後、すぐに違和感に襲われる。
膝を曲げる前に踵が冷たいものに触れたのだ。
「え――」
慌てて足を引っ込めるが、大和の頭は混乱していた。
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