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先々月、ばあちゃんは急死した。
ある日、ばあちゃんが部屋から起きて来なかった。
心配になった母さんが様子を見に行くと、部屋のベットに寝たまま、ばあちゃんは息を引き取っていたのだった。
葬儀はつつがなく済み、自宅に戻ってばあちゃんの遺品を整理している時、部屋に飾っていた絵に気付いた。
「これはどうしようか?」
父さんは壁から絵を外して、床に敷いた布の上に置いた。
「お父さんの絵だから、高く売れるとは思うけど……」
二人の実娘である母さんが床に敷いた布で、絵を結ぼうとしたのだった。
「ちょっと待って!」
ミキは遮ると、絵をまじまじと見る。
「葉っぱ、増えてない?」
よく見ると、絵に描かれた若い頃のばあちゃんの足元の落ち葉が増えているように見えた。
薄らと積もっているだけだった地面の落ち葉は、ばあちゃんの靴の上にかかる程に増えていた。
「気のせいじゃないか?」
「そうよ。気のせいよ」
二人は笑い飛ばしたが、ミキだけはそう思えなかった。
「そうかな……」
「きっと見間違えただけよ。おばあちゃんが亡くなって寂しいのね」
母に頭を撫でられて、ミキは「うん……」と頷く。
「じゃあ、この絵、ボクがもらってもいい? 部屋に飾りたいんだ」
「いいけど。飾るなら、部屋を片付けてからにしろよ」
「おもちゃや洋服がいつも出しっぱなしだものね」
両親に馬鹿にされて不満ながらも、絵をもらったミキは部屋に持って行ったのだった。
それから来る日も来る日も、絵の中に落ち葉は増え続けた。
ミキの部屋に飾られた絵の中に降る落葉は、地面を埋め尽くさんばかりに振り続け、二週間が経つ頃には、絵の中のばあちゃんの靴が隠れるまで積もっていた。
更に三週間が経つ頃には、ばあちゃんの膝下まで落ち葉が積もっており、心なしかばあちゃんの顔も嫌そうに歪んで見えるような気がした。
その頃には、さすがにミキも両親に絵がおかしいと訴え、絵を見た両親も落ち葉が増えている事に気づいたのだった。
「やだわ。本当に増えてる」
「気味が悪いな。捨てるか?」
「そうね。呪われたんじゃない。お母さん、急に亡くなったから」
「この世に無念を残った義母さんの呪いか。ありえるな」
「えっ……。捨てちゃうの?」
「こんな絵、持ってても呪われてしまうからな」
「そ、そんなのダメだよ。ばあちゃんが大切にしていた絵だよ!」
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