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ミキは両親を説得して、なんとかするから捨てないで欲しいと約束させる。
絵なら上から拭いたら絵の具が取れるのではないかと考えて、布巾で拭いたが絵の具は取れなかった。
それなら他の色で塗ればいいと考えて、路上で描いている絵描きに無理を言って、元の色を塗ってもらったが、次の日には元に戻っていた。
そうしている間にも落ち葉は降り続け、とうとうおばあちゃんの腰辺りまで積もっていた。
絵の半分近くが落ち葉が積もっており、雪ならぬ落ち葉の雪崩が起きそうであった。
このまま落ち葉が降り続けて、絵の中で落ち葉で埋まったらどうなるのだろうと考えている内に、人伝てでどんな絵も描き変えられるという画家の話を聞いた。
縋る思いで、ミキはこのあばら屋にやってきたのだった。
事情を聞いたリュークはカップから口を離すと、ミキをじっと見つめる。
「落ち葉が降る絵か……。初めて聞いたよ」
「ボクだって、初めて見たよ。ばあちゃんの絵じゃなかったら不気味で捨ててたかも」
「その絵、描き変えてあげてもいいよ」
「本当!?」
「でも、タダでやる訳にはいかない。ぼくだって、画家としての生活がかかっているからね」
ミキは言葉を詰まらせると、ズボンのポケットに手を入れる。
「お金、持って来たんだけど……。お小遣いを合わせても、これしかなくって……」
ポケットから出てきたのは、硬貨が数枚と紙幣が二枚ほど。
この金額では、良くても一食分しか買えない。絵を描き変えるには到底足りていなかった。
「これじゃあ、足りないよね……」
項垂れるミキに、リュークは「いいよ」と頷く。
「君が仕事をするようになって、足りない分を返してくれるなら。まっ、出世払いって事かな」
「いいの!? ありがとうございます!」
実物を見たいから、絵を持って来るようにミキに頼んで、あばら屋から送り出す。
「リューク」
傍らにベルが現れる。
「またお金にならない仕事を引き受けて」
「出世払いで返すように言ったよ」
「……それ、本当に返すの?」
「さあ。でも、返してくれるよ。きっと」
呆れたように溜め息を吐くと、ベルは去って行く。
絵を抱えたミキが戻って来たのは、それからすぐの事であった。
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