変わった依頼

4/4
前へ
/9ページ
次へ
ミキは両親を説得して、なんとかするから捨てないで欲しいと約束させる。 絵なら上から拭いたら絵の具が取れるのではないかと考えて、布巾で拭いたが絵の具は取れなかった。 それなら他の色で塗ればいいと考えて、路上で描いている絵描きに無理を言って、元の色を塗ってもらったが、次の日には元に戻っていた。 そうしている間にも落ち葉は降り続け、とうとうおばあちゃんの腰辺りまで積もっていた。 絵の半分近くが落ち葉が積もっており、雪ならぬ落ち葉の雪崩が起きそうであった。 このまま落ち葉が降り続けて、絵の中で落ち葉で埋まったらどうなるのだろうと考えている内に、人伝てでどんな絵も描き変えられるという画家の話を聞いた。 縋る思いで、ミキはこのあばら屋にやってきたのだった。 事情を聞いたリュークはカップから口を離すと、ミキをじっと見つめる。 「落ち葉が降る絵か……。初めて聞いたよ」 「ボクだって、初めて見たよ。ばあちゃんの絵じゃなかったら不気味で捨ててたかも」 「その絵、描き変えてあげてもいいよ」 「本当!?」 「でも、タダでやる訳にはいかない。ぼくだって、画家としての生活がかかっているからね」 ミキは言葉を詰まらせると、ズボンのポケットに手を入れる。 「お金、持って来たんだけど……。お小遣いを合わせても、これしかなくって……」 ポケットから出てきたのは、硬貨が数枚と紙幣が二枚ほど。 この金額では、良くても一食分しか買えない。絵を描き変えるには到底足りていなかった。 「これじゃあ、足りないよね……」 項垂れるミキに、リュークは「いいよ」と頷く。 「君が仕事をするようになって、足りない分を返してくれるなら。まっ、出世払いって事かな」 「いいの!? ありがとうございます!」 実物を見たいから、絵を持って来るようにミキに頼んで、あばら屋から送り出す。 「リューク」 傍らにベルが現れる。 「またお金にならない仕事を引き受けて」 「出世払いで返すように言ったよ」 「……それ、本当に返すの?」 「さあ。でも、返してくれるよ。きっと」 呆れたように溜め息を吐くと、ベルは去って行く。 絵を抱えたミキが戻って来たのは、それからすぐの事であった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加