さなえ

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 正直、気味が悪い。この冷凍庫は、リサイクルショップで購入した。もちろん、その時点では中身は空っぽのはずだ。それからこの部屋には、俺しか足を踏み入れていない。考えれば考えるだけ、訳が分からなかった。  棒アイスは一度溶けて形が崩れた様子もなく、アルミ袋を開封すれば食べられそうだったが、流石にそうはしなかった。とりあえず、視界の外に置いておいて霜取りに集中した。ドライバーの先で、がんっ、がんっと氷を突っついては剥がす。その作業を繰り返し、冷凍室を引き出して水洗い。キッチンペーパーで水分を拭き取りって引き出しを戻した頃、案の定棒アイスは少し溶けて形が崩れてしまっていた。  さて、この棒アイスをどうしようか。悩んだが、捨ててしまう気にもなれなくて、冷凍庫に戻した。それから冷蔵室も念入りにウェットティッシュで拭いて、掃除を済ませた。冷蔵室からまで身に覚えのないものが出てきたらどうしよう、とも思ったが、幸いにもその心配は無用だった。  清潔になった冷蔵庫で冷やしたビールは、いつもより、よく冷えている気がした。舌に突き刺さるほどの冷たさだ。 「かーっ、旨い!」  まだまだ覚えたての酒なのだが、飲む仕草は完全に親父譲りだ。と気づいてちょっぴり照れ臭くなる。酒の肴にするのは、四人組のゲーム実況者がパーティーゲームをやってバカ騒ぎをする動画だ。ゲームは、子供の頃友達と遊んでいるもので、内容も知っている。だから、酔いが回って上手く働かなくなっていく頭でも楽しめる。それまでポイントを一番稼いでいて、余裕ぶっこいていた奴がドジ踏んで転落したときは、動画の中の奴らと一緒に笑い転げた。ところで、つまみが切れていることに気づく。外は寒いけど、ちょうどいい酔い覚ましになると思い、コンビニに出掛けた。
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