私からピアノを取ったなら

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「ねーねー、放課後空いてない? カラオケ行こうよ」 「さんせーい! やったぁ! ちょうど歌いたかった曲があるんだよねぇ」  きゃぴきゃぴと華やかな声をあげながら、教室を出ていくクラスメイトたちの背中をぼんやりと眺める。  ついに、声をかけてももらえなくなった。  当たり前だ。  誘う方だって、毎回、断られたら嫌になるもの。  全面的に、断り続けた私が悪い。   窓からさしこむ陽のキツさに目を細めた。  中学三年生になって、もうすぐ三か月が経つ。  だけど私は相変わらず一人ぼっちだ。小学時代からずっとそう。  でも、それは、仕方がないことだ。  私には、家に帰って、ピアノを弾くという使命があるから。  お母さんが帰ってくるまでに、どうにかしてあのページまで弾けるようにならなければ――  パシン! と、想像するだけで、頬に火花のような痛みが走った。  ――また、お母さんに、泣きながら()たれる。
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