1 女王の渇望

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1 女王の渇望

 世界は色めき立った。  遥か彼方の虚空に飛び立った有人宇宙船からの朗報だ。  緑の生い茂る、生命が息づき、資源も豊富、植民も可能な惑星を、その文明史上初めて発見したというニュースに、全ての人が歓呼の声を上げた。  女王は、化粧の厚いその頬を、興奮によりさらに紅くして、言った。 「その星に(わらわ)を連れていっておくれ、一刻も早くその惑星の地表に、降り立ちたいのじゃ」  女王の発言に臣下は恭しい礼で応じた。  大臣のひとり、ジェラベルが答える。 「ぜひとも、陛下の望み、叶えてみせましょうぞ。すぐに陛下専用の宇宙船を準備いたします」 「頼むぞ、ジェラベル」  女王は腹心の部下の名を、甲高い声で呼びつつ叫んだ。 「我の足で彼の星の大地に(しるし)を付ける。それが重要なのだ。そうすることによって、その星を支配するのは、他でもない我と、この世界ならず、後世に知らしめられるのだからな」
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