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プロローグ
このお話は「私たちと彼の物語」だ。
これだけの言葉を聞いて、どんな物語が想像できただろう。
あるクラスに転校してきた男の子と私を含めたクラスのみんなの物語だろうか。はたまた墜落したUFOに乗っていた男性と私たち地球人の戦争史だろうか。それとも仲の良かった私たち四人が亡くなった彼に捧げる鎮魂歌だろうか。
最後のイメージが一番近いけれど、どれも正しく言葉を受け取っていない。
もちろん、言葉が足りないことは承知している。
けれど、まさしく「正しい意味」として言葉を受け取っていないのだ。
だって私が使った言葉は、使いたかった言葉じゃないのだから。
正確に言うならば「定義する言葉が存在しないのに、無理やり既存の形に押し込んだのだから伝わるはずがない」が正しい。
本来、「私たち」が意味する言葉とは、私を含んだグループ等に所属する数人を指す。
同じ部活に属する人を指して「私たち陸上部は~」と言ったり、同じ課題を協力して解く班を指して「私たち2班の考えは~」と味方や仲間をまとめて「私たち」と言っているのだ。
ただ、初めに述べた「私たちと彼の物語」の私たちは本当の意味で「私の複数形」なのだ。WeではなくIの複数形なのだ。
だから伝わるように言いなおそう。
このお話は丸い世界の端っこに存在する「複数の私と彼の物語」だ。
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