第一話 魔法使いを驚かす方法

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   私は適当に相槌を打ちながら、先ほど知覚した体に宿る熱源に意識を向ける。  魔法なんてものがあるというなら見せてみろと、語り掛ける。  百聞は一見に如かず。直接体感した方が手っ取り早く魔法を信じられる。  小説が大好きな私は魔法をモチーフにした本だって何冊も読んでいる。ファンタジーから始まり、今ではミステリーで魔法が使われることだってある。でもどの物語もフィクションであって、想像され創造されたお話にすぎない。 「サンタさんはね、一年間良い子にしていた子供に偉いねってプレゼントをくれるんだよ」とおばあちゃんが言えば、「そうなんだ!」といい意味で何も考えず盲信していた私はもういない。  サンタなんていないことを知ってしまったのだ。  はじめは現実を覆い隠し、夢を肯定していたのに「夢だけでは生きてはいけないから」と「一握りの人しかなれないから」と少しずつ蓋をする。  今だって来年の高校受験に向けて勉強勉学と口うるさく親は言ってくる。  今更、魔法少女になりたいと言っていた昔の私を掘り返すようなことを言わないでほしい。  ……だって魔法なんてないのだから。
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