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そう思っているのに、心の中にある光はことさら大きく主張してくる。目をふさいでも瞼を突き抜けて光が届く。
おばあちゃんが何か言っているけれど、そんなことより光がうるさすぎる。
あぁ、もう!わかったよ、なるようになれ!
心の赴くままに、熱が導いてくれる道に沿って私は脳内に響く言葉を音にする。
「リライト!」
声は伝播して反射し、世界に波紋が創られる。
***
「紗良、あなたは魔女に選ばれたのよ」
「……」
ふと気づくと、おばあちゃんが一分ほど前に言ったことを繰り返している。ついに認知症まで患ってしまったようだ。
人間というものは呆けてから早いらしい。
人を忘れることで孤独を感じる。その孤独が不信感や不安を作る。負の感情は当然ながらストレスとなり、病状を悪化させる。
この悪循環が認知症を早める、と本で読んだ記憶がある。
けれど一分でここまでくるとなると、次は「今日は何年の何月何日だい?」とタイムスリップしてきた人のようなことを言うのだろうか。
とても失礼なことを思っていると、おばあちゃんが空のコップにお茶を注ぐ。
あれ?
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