第一話 魔法使いを驚かす方法

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 一つ、景色が何も変わっていないこと。  心の中の光は確かに私の声に反応した。……そんな気がした。でも結果として何も変わっていないなら感覚が間違っているだけ。  二つ、私は叫んだだけ。    これは少し自分の願望が入っているかもしれないが、私は何も制御していない。魔法なら目的があり、それを達成するために意識するものだと思う。    例えば、記憶を消す能力なら、意識的に「さっきの恥ずかしい場面を消したい!」と対象物を望むものだ。  でも私は音として言葉を発しただけで、そこに意味を何一つ付加していない。もし、言葉を口にするだけで魔法が発動するなら、そんなの暴発する可能性のあるただの危険物だ。  三つ、おばあちゃんの痴呆が進んだだけと解釈するのが一番現実的だから。  私の大声に反応しないことは不思議だけど、どっしり構えているおばあちゃんなら別にあり得ることだ。  私は5秒で考察を終え、結論を出す———今夜、お母さんにおばあちゃんのことを相談しよう。    きょろきょろと周りを見渡した私を見ておばあちゃんは何か気づいたようだ。もしかして「がみた」というダジャレでも言うのだろうか。 「……紗良、あんた魔法を使ったね?」  心の奥を見通すように目をじっと細めてのぞき込んでくる。
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