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おばあちゃんが私の世話をずっとやってきたことは知っている。つまり、おばあちゃん役を十年以上行っているのだ。それだけやれば私専門のスペシャリストになるというもの。心を読むことも簡単かもしれない。
ただし「今までの私ならば」だ。
私だっておばあちゃんと同じだけの時間かけて、孫役を演じてきたのだ。つまるところ、おばあちゃんスペシャリストだ。
今回の質問は語尾が上がっており、疑問形で言っていたことは明白。なんならハテナマークだって聞こえていた。
だからわかる。
これは、九割確信しているが残りの一割の確証がないときの聞き方だ。
……九割ばれている時点で負けている気もするけど。
「ううん、魔法なんて使ってないよ」
首を横に振り、最後に笑顔。かわいく否定する。自身をもって行動することが大切だ。
「本当に?」
全然信じてもらえない。そんなに日頃の行いが悪かっただろうか。
「うん!」
疑り深い顔は変わらず晴れない。
数秒の沈黙が訪れる。
その間、私は変わらず晴天の笑顔。おばあちゃんは曇り顔のままだ。そろそろ何か言葉を発しないと、雨が降りかねない。
どうやっておばあちゃんの天候を変えようかと思っていると、雨ではなく瞼が落ちてくる。
最後に見えたおばあちゃんのため息が私に雲を運んできたのだろうか。
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