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1章 1話 誕生日
「オギャーオギャーオギャーァ」
石井産婦人科の個室に元気な赤ん坊の声が響き渡る
産まれたての赤ん坊は必死に泣き叫ぶ
産まれたよ
私の事を見て
私の事を愛してと言わんばかりに
だがその赤ん坊の誕生を喜んでいるのは取り上げた看護婦と、シワが良く似合う産婦人科の石井先生だけだった。
赤ん坊を産んだ母は興味がなさそうにそれを見つめる。
ひとつの自分から産まれた生命に対してゴミでも見つめるような冷たい目線で。
その目線を理解できなかったことが唯一の救いかもしれない。
理解できてしまったならきっとその赤ん坊はその場で生きる事を辞めてしまうから。
もしかしたら理解出来た方が幸せだったのかもしれない。
看護婦「岡田さん!元気な女の子よ!よかったわねぇ。無事に産まれて。なにも心配なさそう!」
母親「えぇ…。」
看護婦「抱っこしてあげて!!ほら!お母さんって泣いてるわよ!」
母親「はい…」
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