0人が本棚に入れています
本棚に追加
『???』
「え……と、新年明けましておめでとうございます。今年……も、よろしくお願いします。」
スーツを着こなした金髪の青年は舞台の上でたどたどしく話す。赤と青、オッドアイの瞳は忙しなく泳いでいた。その隣に立つ小柄な少女はドレスに慣れていないようで、無言のままスカートをひらひらと揺らしている。奴隷出身なのだろうか、手には石の枷が嵌められている。
「ほ、ほら……!Stellaも何か言わないと……!」
静寂に耐えられなくなった青年は少女に話題を求める。が、少女は不思議そうにドレスを弄んでいるだけである。
「……すいません」
月光に照らされる街、人通りも少なくなってくる郊外スレスレのその土地にひっそりと佇んでいるその建物が彼らのやってきた劇場だった。
「全然いいんだよ。大事なのは写っているかどうかだからね」
口角を上げてレンズから二人を覗くのは彼らをここに誘い込んだサングラスを掛けた男、ヤガミだった。道を歩いていた二人はこの不審な男に声を掛けられ、試験撮影のモデルを頼まれたのだった。
ステラは当然拒んだが、青年がヤガミの勢いに負けて連れて行かれるので仕方なく付いてきたのだ。
「(新技術の開発に携わるんだ、迷惑をかけないようにしないと……)」
一方の青年は劇場に居る関係者たちの真剣な雰囲気に呑まれ、自然と脚に力が篭っている。
各々の事情で劇場に入ってきた二人だったが、今やその視線は一つの物に向けられていた。
「「(アレ……、なんだろう?)」」
先程から薄い直線上に伸びる光が二人に向けられていた。照明やカメラではない、大砲のような穴が付いている立方体の正体は想像もつかない。植物のように細い棒のようなもので支えられてはいるが、全体は総じて機械的であった。
「……頃合ですか」
ヤガミは長い髪を結い上げると、唐突に指を鳴らした。周囲から突然顕れた殺気にすぐさま二人は背中合わせになり、殺気の先を見る。
つい先刻まで機材を操作していた男たちが二人を取り囲んでいた。
「どういうことですか!?ヤガミさん!」
「どういうことも何も、君こそどういうつもりなんだ。奴隷を連れて反逆行為など……叔父上殿が聞いたら泣いてしまうな」
ヤガミはシャムシールのような歪に曲がった剣を構えた。
最初のコメントを投稿しよう!