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男たちの正体を察した青年は自分が持っていた剣を入口へと取りに行こうとするが、それを屈強な男たちが阻んでいる。
「ごめん、ステラ。また巻き込んだみたいだ」
背後に立つステラに謝罪すると、彼女は小さく「大丈夫」とだけ返した。そして、青年の剣がある方向へと走り出した。
「こいつを殺した後は好きにしていい!そいつはそこそこに遊んでやれや!」
その刹那、歓声をあげていた八人の男の一人が後方へと吹っ飛ばされた。あまりに短い時間で起こった事に男たちはぽかんと口を開けた。
「邪魔」
開いた包囲の穴を抜けて、ステラは入口に立て掛けてあった幅の広い剣を手に取った。
「メビウスッ!」
やり投げのような形で飛んできた剣の柄をメビウスは握り、勢いを利用してその場で剣ごと回転し、寄ってきていた男たちを跳ね飛ばす。
「殺しはしないが、退いて貰おう。」
豹変した二人にすっかり度肝を抜かれてしまったヤガミだったが、部下の声で気を取り直すと命令を下した。
「手加減は無しだ!全力で殺れ!」
「応!」と、呼応した男たちはメビウスとステラへと一斉に突っ込んでくる。安直な攻め方の男たちに対して二人はそれぞれ個々の技術を駆使して戦う。
「うおぉぉぉ!」
雄叫びを上げて腕を振り上げた筋肉質な男、さらにその足元から小柄な男がナイフの突きを繰り出してきた。
メビウスは鞘に収まったままの剣を中段から突き上げ、小柄な男を向かってくる太い腕と自らの間に無理やり割り込ませた。
「ぎゃあっ!」
筋肉に後押しされたパンチを喰らった小柄な男は少し離れたところで倒れたまま起き上がれなくなった。そして、それによって作られた虚をメビウスは見逃さない。
「うぁっ!?」
左膝に全身の力を込めた重厚な一撃を受けた男はその場に膝を突いた。そしてその背中を踏み台にメビウスはステラを少し遠くから狙っている狙撃手の頭上へと跳んだ。
「失礼する!」
見上げた狙撃手の顔の上に着地したメビウスはそのままステラの背後へと駆け寄った。戦場に身を置く者ならば背後から向かってくる足音には即座に反応し、対象を殲滅するだろう。
しかし、獣に育てられた子、ステラは違う。
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